柄本時生 [撮影/写真部・張溢文、ヘアメイク/住友由香(MARVEE)、スタイリスト/矢野恵美子、衣装協力/CURLY&Co.(The Weft)]
柄本時生 [撮影/写真部・張溢文、ヘアメイク/住友由香(MARVEE)、スタイリスト/矢野恵美子、衣装協力/CURLY&Co.(The Weft)]

 ジュリエットから三蔵法師まで。突拍子もない役も不思議となじむ俳優・柄本時生さん。二世俳優が多い世代の中で、独特の存在感。どこまでが本音なのかわからない語り口も、親譲りなのだろうか。

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前編/柄本時生が感じた父・柄本明の影響「俳優業が楽しい……? うーん」】より続く

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 二世俳優といえば、世間はつい親の庇護のもとで、甘やかされて育っているイメージを持ちがちだ。でも、柄本家の場合、誰もが想像する「親の背中を見て俳優に憧れた」といったほのぼのストーリーはまったく当てはまらない。七光りもない。現に、時生さんは、「いまだに、自分のやっていることに誇りが持てないタイプですね」と語る。

「去年、コロナになって、『俳優として心境の変化は?』みたいなことも質問されたんですが、特に何も感じなかったです。元々、自分の職業に対してマイナス思考が強くて、コロナになる前から、『芝居なんて、人が生きていく上では、なくてもいいものの一つだよな』って思っていた。だから、コロナ禍で『芝居は不要不急』みたいなことを言われたときも、『やっぱりな』としか思わなかった。もちろん、『仕事ないなぁ、どうしようかな』というのは考えましたけど」

 とはいうものの、今年は出演映画が3本公開され、地上波のテレビドラマにも、春から秋まで3クール連続でレギュラー出演している。紛れもない売れっ子だが、「何か一つの作品が自分のターニングポイントになったことはないです」と言い切る。

「バイトはしなくても食っていけるようになりましたけど、けっこう長いこと、皿は洗ってました。30までは、事務所から、『こういう役の話がきてるけど、どう?』とか相談されたことがない。『仕事が決まりました!』と言われて、台本を渡されて、現場に行く。お仕事はすべて『ありがたくやらせていただく』感覚でした」

 それが、30歳を境に、「こんなオファーが来てるけど、どうする?」と、事務所からやるやらないを打診されるようになった。

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