加藤雅也 [撮影/小黒冴夏、ヘアメイク/結城春香]
加藤雅也 [撮影/小黒冴夏、ヘアメイク/結城春香]

“天下の二枚目”俳優の加藤雅也さんが映画『軍艦少年』が嬉々として演じたのは、最愛の妻を亡くした失意の父親役。「チャレンジできる役を選びたい」と話す。

【映画「軍艦少年」の場面写真はこちら】

前編/加藤雅也 “イメージが二枚目役に定着“していた頃を振り返る】より続く

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 加藤さんは、海外の作品にも積極的に出演している。さまざまな国の映画監督や俳優とコミュニケーションをとる中で、日本は、他の国に比べて、芸術に対するリスペクトが少ないと感じることがあるそうだ。

「世界で活躍する若手監督が、奈良を舞台に映画を制作するプロジェクトがあって、そのとき、イランの監督に驚かれました。『リハーサルに1カ月欲しい』と言われて、『それは無理なんだ』と言っても、監督は日本の芸能事情を理解できないようだった。『イランでは、アートは何よりも優先されて然るべきだと子供だってわかっている。日本はどうして芸術に対する理解が低いんだ?』と。『そのとおりだ』と同意する半面、厳しい条件の中で、これだけのクオリティーの映画を作ることができるのも、日本人ならではだよな、とも思うのですが」

 そう苦笑いしながら、「でも、それを言い訳にしちゃいけない」と続けた。

「映画が生まれるまでの過程がどうだったかなんて、お金を払って見に来る人には全く関係ないことですからね。100億かけようが1千万円で作ろうが、面白いものは面白く、つまらないものはつまらない。命を削る芝居も、いい加減にやった芝居も、最終的にはお客さんに面白いと思ってもらえるかどうかがすべて。我々が、『ひどい条件だから仕方ない』なんて言ったら負けなんです」

 作り手たちは、どんなときも、自分たちにできるベストを尽くしているものだ。ただ、自分たちが作りたい作品に対する需要のなさに、落ち込むことがあるという。地味かもしれないけれど誠実な家族の話、真面目なヒューマンドラマを作りたいと思っても、企画会議では、「お客さんが入らない」と一蹴されることもしばしばだ。

「日本は、もっと、子供の頃から、映画芸術に触れる機会を作るべきだと思いますね。子供が喜ぶからといって、刺激的なものばかりを与えていると、物事の深い面を掘り下げる感性が育たなくなるかもしれない。僕は、これからは子供たちに、難しい本を最後まで読み切る力や難解な映画を最後まで見て、感想を語り合うとか、そういう場をもっと設けるべきだと思います」

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