風間杜夫さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・高橋奈緒)
風間杜夫さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・高橋奈緒)

 唐十郎作品「泥人魚」でブリキ屋のおやじ、「日本沈没‐希望のひと‐」では経団連の会長を演じるなど、幅広い役柄で違う顔を見せる俳優・風間杜夫さん。実は舞台や映像だけでなく、ミュージカルや朗読、声優にも挑戦しています。作家・林真理子さんが、風間さんのさまざまな仕事の話や、その裏話をうかがいました。

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風間杜夫、72歳で「アングラ」に挑戦「芝居は見るものじゃない、出るもの」】より続く

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林:若い俳優さんも、風間さんとやるのが楽しみなんじゃないですか。いろいろ勉強できるし。

風間:僕は人の芝居にあれこれアドバイスとか、注文とかをしないタイプなんですよ。じつは、失敗したな、と思うことがあって。以前、芝居で若い子が演出家にさんざんダメ出し食らってて、休憩時間に「風間さん、教えてください」って言うから、声の出し方とか立ち位置とか、三つ四つアドバイスしたんです。それで休憩時間が終わって、その若い子が僕に言われたとおりやったら、「なに勝手にやってんだ!」ってますます怒られちゃった。それ以来、僕はいっさいアドバイスや注文をしないことにしたんです。演出家のイメージが僕のイメージと違うことも多いな、と思ってね。

林:私、このあいだ「女の一生」(新橋演舞場)を拝見しました。

風間:ああ、大竹しのぶさんですね。去年の暮れでした。

林:風間さんは商業演劇もやるし、新派もやるし、唐十郎さんともやるし、テントデビューもするし、振り幅がすごいですね。

風間:すごいですよ、僕は。一人芝居もやるし、大竹しのぶさんとミュージカル(「リトル・ナイト・ミュージック」2018年)もやったりして。

林:つか(こうへい)さんに「踊っちゃいけない」と言われてたんでしょう?

風間:「日本でいちばん踊っちゃいけない」って言われてました(笑)。ミュージカル出演に当たっては、踊りはワルツぐらいで、歌も吉幾三さんの感じぐらいでいいと言われて口説かれたんですけど、だまされたというか、スティーブン・ソンドハイムというミュージカル界ではいちばん難しいと言われている人の楽曲で、命を縮める思いでした。だからもう二度とやらないです(笑)。

林:風間さんは声優もやられてますよね。

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