東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、日本シリーズを制したヤクルトの巧みな登板間隔について語る。

【写真】日本一となり、胴上げされるヤクルトの高津監督

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 プロ野球は日本シリーズが終わり、公式戦全日程が終了した。日本一を勝ち取ったヤクルト、惜しくも敗れたオリックス、両球団の関係者すべてに拍手を送りたい。近年の日本シリーズは一方的な展開が多かったから、1点の攻防の面白さをファンの方々も再認識していただけたのではないか。

 前回のコラムでも少し触れたが、ヤクルト、オリックスともに「しっかりと投手に最高のパフォーマンスを発揮させること」を考え抜いた投手起用だったと思う。先に王手をかけたヤクルトは第1戦先発の奥川恭伸、第2戦で完封した高橋奎二をともに第7戦に回した。シーズン中から、登板間隔をどれだけ空ければ回復するのかを考えたとき、それがベストと判断したのだろう。日本シリーズで第6戦まで違う先発投手を立てる時代になったのかとも思う。打者のレベルアップ、バットなどの革新により、もうエースが7戦のうち3試合に先発して、疲れた中で登板して勝てる時代ではないということだ。

 第6戦で先発して9回を投げ切ったオリックスの山本由伸投手は本当に素晴らしかった。球数にして141球か。日本シリーズという舞台、しかもロースコアの戦いの中での141球はシーズンとはまったく違うものだ。八回に首脳陣が声をかけにいっても、九回にマウンドに立ったこと。これは大きな財産になる。山本クラスであれば、シーズン中なら、点差に応じて、打順に応じて、うまく力を抜くこともできる。スイッチの切り替えがさらにうまくなれば、沢村賞を獲得した山本由伸の完投数はもっと伸びるだろう。常に完投する意識が芽生えれば、球数を減らす工夫も自然と身につく。

 日本シリーズを見て、ほかの10球団も先発投手起用について、どう考えるかだな。中10日で使えば、球威も含めてベストな投球ができる投手もいれば、間隔を空けることを嫌がる投手もいる。個人差は大きい。疲労回復に関するさまざまなデータがそろう今、選手がパフォーマンスを発揮できる登板間隔を考えないといけない。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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