ペットはもはや大事な家族。読者とペットの愛おしい日常のひとコマをお届けします。今回の主役は、のオビちゃんです。

【写真】こんな姿見たことない! 枯れ葉をやさしく抱えて立ち上がる猫

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「オビちゃん(写真、雄、4歳)の名前の由来は?」。そう聞かれるとまず、初めて会ったときにとてもおびえていたから“オビ”ちゃんです、と説明するようにしている。

 オビと出会ったのは、ある保護猫施設だった。最初に施設に行ったとき、顔と目が真ん丸くきれいなグレーの猫と、同じく顔と目が真ん丸なかわいいキジ猫が目についた。

 他にも3匹同じような顔つきの猫がいた。多頭飼育崩壊のところから引き取られた猫たちです、と説明を受けた。

 どれも成猫で、丸っこいかわいらしい顔つきだが、異様に人を怖がっていた。施設に来たばかりのようで、近づくと、みな一様に小さいとはいえない体をケージの後ろに無理やり押し込んで、警戒するようにこちらをじっと見る。よほど怖い目にあったのだろう。

 そのうちの一匹がオビだった。こわばった顔つき、驚いたように常に見開いている目。恐る恐る手を差し出すと、少しにおいをかいでくれた。

 それからもうすぐ2年。最初の1週間は家具の陰に隠れてなかなか出てこなかった。そのうち少しずつ距離が近づいて、隣に座るようになった。

 自分からスキンシップを求めてくるようにもなり、最初は大暴れしていた抱っこも嫌がらなくなった。遊びに来た友達たちにも物おじせず近づいていくようになった。

 いつからか、一人暮らしのベッドには枕が二つ並ぶようになった。一つは自分、一つはオビが寝るための枕だ。

 オビの名前の由来には続きがある。アフリカに起源をもつ言葉で“心”を意味するとか。おびえが去り、ずっと穏やかな心でいられますようにという思いを込めて、私は今日も彼の名前を呼ぶ。(東京都豊島区/32歳/会社員)

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週刊朝日  2021年11月26日号