東尾修
東尾修

 日本ハムの新庄剛志“ビッグボス”が沖縄キャンプを視察した。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、感想を語る。

【写真】プロ初完封で巨人に勝利し喜ぶヤクルトの奥川投手

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 プロ野球はクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージが10日から始まった。初戦をテレビで見たが、ヤクルトの奥川恭伸投手、オリックスの山本由伸投手がともに完封勝利。1勝のアドバンテージを持つセとパの王者が先勝する展開となった。

 最終結果がどうなるかわからないが、この時点で言えることは一つ。通算2勝0敗としたヤクルトとオリックスが圧倒的に優位に立ったということだ。まず、ルール的なことで言えば「上位チーム」つまりヤクルトとオリックスは、「同じ勝ち数なら日本シリーズ進出となる」ということ。第2戦から第6戦までの5試合を、仮に1勝3敗1分け(通算3勝3敗1分け)でいい計算だ。しかも今年は九回打ち切り。引き分けの確率は高まっている。優勝した2チームにとって「勝ちと同等」の意味を持つ。

 それにしても、奥川は素晴らしい投球だった。9回6安打無失点でプロ初完封をこの大舞台でやってのけた。球数は98球。抜群の制球力で四球から崩れる心配はまずない。初回に先制してもらったことで、どんどんストライクゾーンで勝負することができた。

 ストライクゾーンで序盤から勝負できれば、中盤以降は相手打者は、追い込まれてはいけないと振る意識が強くなる。六回先頭の松原に対し、初球にストライクを取った以外は、ストライクからボールになる球で空振り三振に斬った。そういったマネジメントを20歳にしてできるのだから恐れ入る。短期決戦となれば、相手も攻略へ策をめぐらせるが、98球という球数で終えた。つけ入る隙がなかった。

 オリックスの山本由伸も九回に156キロを記録したように、力の入れどころ、配分が申し分なかった。四回無死一塁から、打者18人連続アウトで仕留めた。立ち上がりに多少のブレがあっても、自らのリズムを取り戻せば打たれることはない。今、日本でナンバーワンの実力であることを存分に見せつけてくれた。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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