被相続人が亡くなったときに、もっとも困る問題が、冒頭のAさんの例のように、相続する財産にはどういうものがあって、それがどこにあるのかがわからない状態だ。

「こうなると、残された家族が財産を探す作業に追われることになり、場合によっては相当の時間を要することになります。そうならないために生前にできる準備として最低限やっておくべきなのが、何がどこにどれだけあるのかという財産リストを、メモでも良いから残しておくこと。『自分が亡くなったら、これを見たら何がどこにあるのかがわかる』というものを残しておくことが、とても重要なのです」(児島さん)

 このとき、なるべく財産を整理して、わかりやすい状態にしておきたい。残される家族のためでもあるが、自分自身が財産を把握しやすくするためでもある。ファイナンシャルプランナーの柳澤美由紀さんは言う。

「70代になったら、財産をできるだけ整理して、わかりやすい状態にしておきましょう。人は年を重ねるごとに、いろいろなことが面倒になり、財産の管理も煩雑になってしまう例が少なくない。自分で把握しやすくするためにも、分散している口座を一つにまとめるなど、老いじたくとして資産の整理を心がけて」

 次に、相続人について。被相続人の遺産を相続できる人は法律で定められており、それを「法定相続人」という。被相続人の配偶者、つまり夫や妻は、必ず相続人になる。ただし、あくまでも法律上の婚姻関係にある配偶者に限られ、内縁関係の夫や妻は相続人になれない。配偶者以外に相続人になれる人には順位があり、第1順位は、被相続人の子ども。被相続人に配偶者と子どもがいれば、配偶者と子どもが相続人になる。子どもは実子か養子かを問わず相続人になれるほか、生前または遺言書で認知された子ども(非嫡出子)も含まれる。

(週刊朝日2021年11月19日号より)
(週刊朝日2021年11月19日号より)

 第2順位は、被相続人の父母。被相続人に子どもがいなければ、配偶者と父母が相続人になる。父母ともに亡くなっていて、祖父母の両方あるいはどちらかが存命なら、配偶者と祖父母が相続人になる。第3順位は、被相続人の兄弟姉妹。子どもがおらず、父母・祖父母も亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、すでに亡くなっている兄弟姉妹がいたら、その子ども、つまり被相続人の甥・姪が相続人となる。

(週刊朝日2021年11月19日号より)
(週刊朝日2021年11月19日号より)
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