※写真はイメージです (GettyImages)
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 年間110万円の非課税枠を利用した「生前贈与」。相続税対策として知られているが、この生前贈与のあり方が変わる可能性があるという。来年以降、贈与税と相続税の一体化の議論が本格的に始まるのだ。

【暦年贈与と精算課税制度の違いはこちら】

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 近い将来の贈与税と相続税の一体化に向けて、今から何をするべきか? 駆け込み贈与は時期尚早としたが、早く準備するのに越したことはないという。相続実務士の夢相続代表・曽根惠子氏が話す。

「現在は相続発生から3年前までの贈与財産は相続財産に合算されますが、今後の改正によっては合算期間が5年ないしは10年へと広げられる可能性があります。法施行からしばらくは現行制度の合算期間を維持する経過措置が取られる可能性もありますが、早めに贈与を始めるほうが大きな節税効果が得られることには変わりありません」

 昨年12月に公表された自民・公明両党の令和3年度税制改正大綱に「次の適用期限の到来時に、制度の廃止も含め、改めて検討する」と書かれた、結婚子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は23年3月末をもって廃止される可能性が高いため、今のうちに活用したほうがいいだろう。教育資金も早めが得策だ。教育資金なら1500万円まで、結婚・子育て資金は1千万円まで贈与税が非課税となる。

「ただし、今年の改正で運用条件が厳しくなり、教育資金は30歳、結婚・子育て資金は50歳を超えた時点で“使い残し”があった場合、その分は相続税額に加算されるうえに2割増しの相続税が加算される点は要注意です」(曽根氏)

 暦年贈与の110万円の非課税枠は今後、縮減される可能性があるため、今のうちにフル活用しておこう。このとき、贈与の実態を備えていることを証明するための贈与契約書を交わしておくこと。

「子や孫の名義で作った銀行口座に毎年110万円ずつ振り込む人は少なくありませんが、口座名義と実際に管理・所有する人が異なる“名義預金”と認定されれば、相続財産に加算されます。実際、相続調査時に名義預金や名義株式と認定されて、相続税が課せられるケースは意外に多いです」(税理士法人チェスター・河合厚税理士)

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