※写真はイメージです (GettyImages)
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 満足いく最期を過ごしてほしい──。在宅療養者のために家族ができることはどのようなことがあるのか。日々弱っていく人と向き合うのは初めてという人も多いだろう。誰しもが後悔しないために準備すべきことを取材した。

【人が死に向かうときに見られる体の変化はこちら】

前編/みんなで考える「在宅死」 在宅療養で家族ができることは?】より続く

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 最期を家で過ごす選択をするということは、言い換えれば、患者がだんだんと弱っていく姿を見ていかなくてはならないということだ。家族としては、それを受け入れる準備と覚悟が必要になる。病院で亡くなる人がほとんどという現代、死は日常から遠い存在になっている。そばで見守る家族は、人が死に向かうときのプロセスを知ることが大事だ。死にゆく過程を前もって正しく知らなければ、本人、家族とも不安になり、時にはパニックに陥ってしまう。

(週刊朝日2021年10月29日号より)
(週刊朝日2021年10月29日号より)

 人が死に向かうときに見られる体の変化を知っておくことで、できる限り、落ち着いてゆっくりとお別れができるように、心の準備をしておきたい。これまで千人を超える人の最期を家で看取ってきた千場純医師(三輪医院院長)は言う。

「たとえ苦しみがあっても、いよいよ最期というときになると昏睡状態になり、苦しい感覚はわからなくなるといいます。ただし、そんな中で聴覚と触覚は最後まで残っているので、そばにいる人は優しい声かけとスキンシップを、最後の最後まで続けることが大切です」

 家族を始め、周囲のために患者本人が準備できることはどんなことか。まずは、延命措置や死に場所の希望も含めて、折に触れて周囲に伝えておくことだ。在宅療養の現場では、しばしば患者本人が不在の中で、在宅療養や延命治療、病気の告知、入院・在宅などの論争が起こることもある。本人の希望と同居家族の納得の上で、在宅療養を進めていたのに、遠くに住む親戚から「こんな状態で家に置いておくなんて! 一刻も早く入院させろ」と怒鳴り込まれるケースもあるという。そうならないために、自分の最期についての希望を、できれば紙に書き、周囲に伝えておく。そうすれば、家族が消耗するような論争を防げるはずだ。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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