(週刊朝日2021年10月29日号より)
(週刊朝日2021年10月29日号より)

 妻の年金について、どこまでご存じだろうか。厚生年金の加入者で年下の妻がいれば一定の条件で夫の年金が増額され、やがてはそれが妻の年金に振り替わる。妻自身の年金はいろいろな方法で増やせるし、夫が死亡した後はどうなるのかも重要だ。このさい徹底研究をしてみよう。

【よくある妻の年金の最終形はこちら】

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 総額675万6300円──千葉県に住む会社員のAさん(56)が将来、主に妻がいるおかげでもらえる年金額の合計だ。

 どうして、こんなにもらえるのか。秘密を解くカギは夫婦の年齢差にある。

「ウチの女房は私より15歳下なんです」(Aさん)

 会社員や公務員が加入する厚生年金には、「加給年金」という家族手当ともいえる仕組みがある。一定の条件を満たす配偶者がいれば、年金にプラスアルファがつくのだ。

 配偶者は年下が絶対条件で、配偶者が65歳になるまで年金額が増額される。つまり、妻と年齢差が大きいほど増額期間が長くなる。

 また、高校を卒業するまでの子供がいれば、さらに加給年金が増額される。50代半ばならその年齢の子供はいないことが多いが、Aさんには今6歳になる娘がいる。

 Aさんが加給年金のことを知ったのは約10年前、自分にあてはめてみて金額の大きさに驚いたという。Aさんは今では具体的な加給年金額をそらんじている。

「私が65歳で年金をもらい始めると、女房分として15年間、毎年『39万500円』が、そのとき中3の娘の分は高校を卒業するまでの4年間に毎年『22万4700円』がそれぞれ加給年金として増額されます」(価格は今年度の基準)

 冒頭の金額は、「39万500円×15年+22万4700円×4年」の答えなのだ。

 もちろん年金をもらうようになっても、子供の教育費などにお金がかかる。Aさんがしみじみと言う。

「年をとって年金をもらう時期が近づくにつれて、『これがないと、やっていけない』と実感するようになりました。こんなに貴重な財源はほかにありません」

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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