※写真はイメージです
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「在宅療養の先生を探すのは、子どもを保育園に入れるための“保活”に似ているなと思いました。ただ、保活と大きく違うのは、利用者が高齢者のせいか、口コミがほぼないこと。だから合う先生に行き着くまでには、本当に苦労しました」

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 こう話すのは、現在、在宅療養中の母(78)を介護しているAさん(50・東京都在住)。会社員のAさんは現在、コロナの影響から在宅で仕事をしている。母の住む実家近くに住むAさんは、パソコンを持参し、実家で仕事をすることで、平日も母の様子を見ながら在宅療養を続けている。

 Aさんの母は、4年前にパーキンソン病と診断され、昨年2月まで外来で都内の大学病院に通院していた。だが3月に圧迫骨折が発覚し、緊急入院。その後、4月にリハビリのために別の病院に転院したが、そこで新型コロナウイルスに院内感染し、指定病院に転院させられた。

 幸いにも無症状だったが、PCR検査でなかなか陰性にならず、1カ月ほど病院に軟禁状態となった。その間の家族の面会は一切禁止。Aさんの母は、その1カ月でげっそり痩せて筋肉が落ち、入院時は自分で歩けていたのに、車椅子での退院となった。

「わずか1カ月の入院で、あまりに変わり果てた母の姿を、最初はなかなか受け入れられませんでした。ですが、病院の退院相談が非常に充実していたため、そこで初めて訪問診療や手すりの取り付けサービスなども網羅的に教えてもらうことができたのは、不幸中の幸いでした」(Aさん)

 退院と同時に、在宅介護がスタート。退院から2カ月ほどは、月2回の診療のために介護タクシーで通院しながら訪問リハビリを依頼していたが、通院に限界を感じ、昨年12月から本格的に訪問診療に切り替えた。在宅療養の医師探しは、自治体の在宅医療相談窓口に連絡し、症状に合う病院をリストアップしてもらったり、自分でネットで調べたりするなどし、最終的に三つの病院の医師に自宅に来てもらい、比較検討して決めた。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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