モロ師岡 (撮影/写真部・張溢文)
モロ師岡 (撮影/写真部・張溢文)

 現在、62歳。俳優・コメディアンのモロ師岡さんは、人生そのものがネタの宝庫だ。ストリップ劇場での修業時代を経て、落語と出会い、北野武監督に役者としての扉を開いてもらった。新作舞台で演じる、元噺家の父親役はとても身近な感じがするという。


前編/ストリップ劇場が変えた人生 流されてきたモロ師岡が見つけた楽しさ】より続く


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「飽きることはないですね。続けていくと楽しさが見つかって、自分の表現力も、少しずつですが増えていく実感がある。思い起こせば、若い頃にこういう仕事を目指した理由の一つは、『サラリーマンなら定年を迎えたら仕事を辞めなきゃならないけど、芸人や役者なら一生やっていけるな』ということでした。この仕事は死ぬまでやり続けたいです。ただ、70はいちおう区切りになるのかな。役者は体力勝負だから、セリフが言えなくなったらおしまいでしょう? 今の調子で続けられるのが70までだとしたら、そこからはアクセルを緩めることも必要かもしれないな、と思ったりしています」


「仕事を辞めたら、ただの腑抜けですね」とおどけたように呟いた。「俺から仕事をとったら、日々、考えることが何もなくなっちゃうだろうから」と。


 千葉の実家には、子供だった頃の日記がまだとってある。たまに実家に帰って、日記をパラパラとめくってみると、「人間って成長しないんだな」としみじみ思う。


「今、自分がコントで書いている内容と、そんなに変わらないんですよ(笑)。日記というよりも一人コント。あの頃から兄貴を前にして、コントめいたことをして笑わせていた。もちろん、オチなんかなくて、その日にあった出来事とか、そのときの感情を書いているだけ。それでも、ちゃんと誰かに読まれることを意識して、覚悟して書いている。だいたい、ライブでも、20歳ぐらいのときに作ったネタをやったりしますからね。実際にテレビでネタを披露したのは27歳頃ですが、そのネタを、いまだに新鮮な気持ちでやれるというのは、体は62歳だけど、中身は20歳ぐらいのまんまなんじゃないかって」

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