西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回は「人体という小宇宙」。

帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

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【共振】ポイント
(1)宇宙の天体と人体が響き合うというのは自然なこと
(2)体内の宇宙リズムは消化腺と生殖腺で作り出される
(3)人体は宇宙のメカニズムを宿した「小宇宙」である

 旧暦の8月15日に出る月は中秋の名月といわれ、お月見の対象になりますが、この中秋の名月は満月とは限りません。でも先日の9月21日(新暦)に見た中秋の名月は8年ぶりの立派な満月でした。皆さんはお月見をされましたか。夜空にきれいに浮かび上がる満月を見ると、何ともいえないパワーを感じますね。月と自分の体が響き合っているような気持ちになりました。

 この宇宙にある天体と人体が響き合うというのは、自然なことなのです。なぜならば、人体には宇宙のリズムが内蔵されているからです。

 私が敬愛してやまない解剖学者の三木成夫先生は「体内の宇宙リズムは消化腺と生殖腺が作り出している」とおっしゃっていました。

 消化腺とは消化管に付属して消化液を分泌する腺のことで、唾液腺、肝臓、膵臓、胃腺、腸腺などです。生殖腺は卵巣および精巣、すなわち生殖巣のことで、卵子、精子をつくるだけでなく、性ホルモンを分泌します。この「食」と「性」の営みこそが、生命の中心であるというのが、三木先生の持論でした。先生はこう語ります。

「胃袋というものは、中身が空っぽになったら、すぐに食物を催促する──そんな自動機械ではありません。ちゃんと朝・昼・夜とか、あるいは春・夏・秋・冬などといった、大きな宇宙的な要素、つまり、われわれの所属する『太陽系』の、天体相互の運行法則に、きちんとしたがって動いているのです。(中略)胃袋そのものが太陽系の一員なのです」(『内臓とこころ』河出文庫)

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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