田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
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 自民党総裁選はどうなるのか。ジャーナリストの田原総一朗氏が「従来の総裁選とは大きく違っている」と話す理由とは?

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 このところの新聞やテレビの報道を見ていると、菅義偉首相の方策が大成果を上げているな、と判断せざるを得ない。

 菅首相が辞意を表明し、岸田文雄、高市早苗河野太郎、野田聖子の各氏が総裁選に出馬する決意を示すと、新聞、テレビなどのマスメディアが連日、総裁選という自民党の大宣伝を展開することになった。理由の一つは、今回の総裁選は従来の総裁選とは大きく違っているからだ。

 これまでの総裁選は、大派閥の領袖(りょうしゅう)の意向で総裁が決められていた。中曽根康弘、竹下登、宮沢喜一、橋本龍太郎、小渕恵三、そして安倍晋三、菅義偉と、いずれもこのパターンである。だが、今回の総裁選は、大派閥の領袖の意向が通用しない。だから興味深いのである。

 そもそも、菅首相が辞任することになったのは、自民党の多くの国会議員たちが、この先の衆院選挙で、菅首相の下では落選するかもしれない、と強い危機感を抱いたからだ。全国のどの選挙区でも、菅首相の評判が大変悪いからである。だから、自分たちが当選するには、何としても菅首相に辞めてもらわなければならない、と強く求めた。

 8月の中旬ごろまでは、安倍前首相も麻生副総理も、菅首相の続投でいくつもりでいたのである。しかし、それぞれの派閥の国会議員たちが、菅首相の辞任を強く求め、安倍、麻生両氏も考えを変えざるを得なかったのである。

 菅首相は、なんとかして支持率を上げるために、党と内閣の新型コロナウイルスへの対応を積極化しようと考え、党と内閣の人事に手をつけることにした。そして、そのことを二階幹事長に相談すると、二階氏は賛成し、まず自分を幹事長から外すように指示した。

 そこで菅首相は、二階氏の指示に従い、小泉進次郎氏に幹事長になることを強く求めたのだが、小泉氏は断り続けた。他にも閣僚に就任するよう求めた人物たちに断られ、菅首相は辞任の意を固めざるを得なくなったのである。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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