映画「空白」は、23日から新宿ピカデリーほか全国公開 (c)2021『空白』製作委員会
映画「空白」は、23日から新宿ピカデリーほか全国公開 (c)2021『空白』製作委員会

 コミカルな役柄の多い俳優・古田新太さん。しかし、7年ぶりの主演作は、現代の「罪」と「赦し」を映し出すヒューマンサスペンス。演じるのは不慮の事故で娘を失い、その事故の関係者を追い詰めていく父親だ。

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前編/古田新太の“芝居の流儀”「オモシロにタブーはない。言葉狩りもナンセンス」】より続く

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 映画「空白」の撮影が行われたのは、昨年の3月から4月上旬。緊急事態宣言が発令される直前に、愛知県蒲郡でクランクアップした。“3密”という言葉は広がり始めたが、まだ、地方での飲み会などはさほど制限されていなかった時期だ。

「ただ、(主人公の)添田によって徹底的に追い詰められるスーパーの店長を演じた(松坂)桃李だけは、役に集中してました。『飲みに行くぞ!』と言っても、『すみません』と毎回断られた(笑)。それはそれで役者としては信用できるな、と」

 娘を失った父親の“狂気”を演じながら、「基本、あまり表情は変えてないんです」という古田さんだが、あるシーンで、監督からの突然の指示には面食らった。

「ト書きに何も書いてなかったので、無表情でやろうと思っていたんです。そうしたら監督が急に現場で、『いっそ泣いちゃいますか』と。そのとき初めて、『監督は、あれで結構ウェットな人なんだな』と思いましたね(笑)」

 古田さんは、言われたとおりに泣いた。基本的に、監督や演出家の指示には逆らわないことにしているのだ。人とのやり取りの中で添田の感情が変化していく。その表情の移り変わりがあまりに見事なので、物語の進んでいく順番どおりに撮影する「順撮り」の手法をとっているのかと思いきや、そうではないという。

無免許でいろんな職業になれる

「“順撮りじゃないとやりにくい”なんていう俳優は、自分が下手だと言っているようなものじゃないですか(笑)。台本を読んで、自分の頭の中で感情の変化が整理されていれば、シーンごとに、その感情を引っ張り出せばいいだけで。そんなこと言ってたら、朝ドラとか撮れないです」

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