ジョニー・デップ(c)高野裕子
ジョニー・デップ(c)高野裕子

 水俣病を世界に伝えた米国の写真家ユージン・スミスをジョニー・デップが演じる映画「MINAMATA‐ミナマタ‐」が23日から全国公開される。今作で製作も務めたデップに作品についてインタビューした。

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 ジョニー・デップが愛し、尊敬してやまない偉大なフォトジャーナリスト、ユージン・スミス(1918~78)。1930年代にカメラマンの仕事に就き、ニューズウィーク誌やライフ誌で活躍、第2次世界大戦下の沖縄やサイパン、ヨーロッパの貧困など、20世紀の歴史を貴重なモノクロの写真に収めた。そのカタログは膨大、命の危険を冒してまで仕事に取り組んだ彼の作品は、魂に訴えかける名作ばかりだ。

 映画「MINAMATA‐ミナマタ‐」は、このスミスの目を通して本の水俣病が描かれている。スミスにとって最後の写真集となった『MINAMATA』の制作の過程が明かされ、慈悲と共感が込められた人道的な写真と相まって、世界で大きな反響を呼んだ。本作はジョニー・デップが製作と主演を務めた。特殊メイクを施し、灰色のひげをたくわえて熱くシャッターを切る姿は、スミス本人と見間違うほどだ。

 時は1971年。コマーシャルの仕事で知り合った若き妻、アイリーンの説得で、水俣病の実情を写真に収めることを決心したスミスは3年間患者の住む「ミナマタ」に暮らし、当時の患者の状況を写していく。

──あなたは写真に強い関心があるそうですが、ユージン・スミスについて以前からご存じだったのですか?

「写真家でありアーティストだったユージンについては、かなり詳しく知っていた。また彼の人生についても興味があったので調べ、写真家としてどんなプロジェクトに取り組んだかも知った。幸運なことに、ユージンの妻だったアイリーンさんが製作に関わってくれて、大きな助けになったんだ。何か事件に遭遇したとき、ユージンがどんな反応をするか、どんな態度を示す人だったのかについて、詳しく知る機会ができたんだ」

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