2013年、アメリカの俳優、アンジェリーナ・ジョリーさんが将来の乳がんリスクに備えて、健康な乳房の切除手術を受けたことを公表し、大きな話題となった。大慈弥医師はこうした「将来のリスクに備えた切除と再建」についても賛成する。

「遺伝的に乳がんの可能性が高いならば、発症前に切除し、理想的な乳房を再建するのは、健康面・美容面ともによいこと。セレブだからできたこと、と言われるかもしれませんが、2020年4月の診療報酬改定で、予防的乳房切除も保険対象になりました。高額療養費制度もありますから、自己負担は十数万円程度。50代以降の乳がん発症率も上がっていますから、乳がん検診を必ず受けつつ、予防措置として検討する価値はあるでしょう」

 見た目の悪さだけでなく、「健康上の理由からも、ぜひ整えたいのが陥没乳頭です」と指摘するのは新宿美容外科・歯科院長の酒井成身医師だ。陥没乳頭のほとんどが先天的なもの。右の写真のように、乳頭が陥没して、刺激しても出てこない状態だ。乳管が詰まって乳汁が出ないなど、妊娠・出産・授乳時に悪影響が出る可能性もある。酒井医師は独自の「酒井法術式」で、乳管を傷つけることなく、授乳も可能な状態で陥没乳頭を解決する医師として、高く評価されている。

「陥没を放置した結果、高齢期になってからトラブルになることもある。乳汁は出なくても、何かしらの分泌物は出ているので炎症が起こりやすく、乳腺炎に発展することもあります」(酒井医師)

 前出の大慈弥医師も「乳がんの症状として、後天的に陥没乳頭になる可能性はある」と指摘する。後天的に陥没した、若いころから陥没を放置している、という人は、早めにチェックしたほうがいいかもしれない。(ライター・浅野裕見子)

週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋