「形を整える上で大切なのは乳頭の位置です。標準的で美しいバランスとされる高さは、わかりやすく言うなら、ひじから肩までの二の腕の真ん中あたりにあるのがよい、とされています」

(週刊朝日2021年9月24日号より)
(週刊朝日2021年9月24日号より)

 では実際、どんな術式があるのだろう。

「乳房縮小術やインプラント(シリコーンバッグ)を挿入する豊胸術などの外科手術のほか、自分の脂肪を注入する方法が世界的には標準的治療となっています。しかし、わが国では非吸収性素材またはヒアルロン酸など吸収性の注入物(充填剤、フィラー)を注入する治療法が圧倒的に多く行われています」

 こう語るのは、一般社団法人「日本美容外科学会」監事で北里大学形成外科・美容外科客員教授の大慈弥裕之医師だ。

 注入治療は手術に比べて費用も安く、入院も不要。傷痕も残らなくて済む、などのメリットが訴求されて人気だというが、「美容外科学会ではこうした手法は推奨していません」(大慈弥医師)。

美容と健康を両立する手術も

(週刊朝日2021年9月24日号より)
(週刊朝日2021年9月24日号より)

 日本では60年以上前からさまざまな充填剤を注入する豊胸術が行われてきたが、後に重度の合併症や後遺症を生じる例が絶えず、2019年に学会合同で「非吸収性充填剤を豊胸目的に注入することは実施するべきでない」とする共同声明を発出した。また、昨年公表された美容医療診療指針でも「推奨しない」とされているのだ。

「美容医療は自由診療のため、一般の保険診療よりも医師の裁量が大きく、未承認の医療材料が多く使用されています。安全性や有効性が確認されていない素材を使うことも、施術方法も医師の自由。こうした注入治療を希望する場合には、何を・どのように体内に入れるのか、数年後に後遺症が出るリスクはないのか、慎重に検討すべきです」

 一見手軽な方法よりダウンタイム(術後の回復にかかる時間)が長い手術のほうが、確実で安全な場合も多いとも。

「たとえ注入するのが自分の脂肪だとしても、医師の技術次第ではトラブルもある。外科手術なら患部を直接観察しながら状況判断して操作できる。整胸方法としても手術のほうが確実で優れているものも少なくありません」(大慈弥医師)

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