
『日本哲学の最前線』(山口尚著、講談社現代新書 990円※税込み)の書評を送る。評者は作家の平山瑞穂氏。
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音楽のJポップと似た意味合いで「世界と伍する」存在としての「J哲学」。自身その一翼を担う著者が、2010年代のJ哲学を特徴づける際立った動きを概観し、初学者にも把握しやすい見取り図を描いている。
本書で取り上げる國分功一郎、青山拓央、千葉雅也、伊藤亜紗、古田徹也、苫野一徳の6人は、いずれも最前線を張る若手の俊英。よりよく生きることを標榜するその思想は、哲学と聞いて思い浮かべがちな観念的な抽象論とはほど遠く、われわれの実生活のアクチュアリティに驚くほど寄り添ったものだ。著者は特に、6人がそれぞれ視座を異にしながらも、ものごとを決定する「意志」というものの持つ疑わしさや、「より自由になるための不自由」に着目しているという一点で通底すると見ている。紹介されている著作を実際に読みたくなる優れたガイド。
※週刊朝日 2021年9月17日号