日経平均株価3万円台回復は5カ月ぶり。※ボードは2月(c)朝日新聞社
日経平均株価3万円台回復は5カ月ぶり。※ボードは2月(c)朝日新聞社

 ついに9月7日、日経平均株価が一時3万円を超えた。3万円台の回復は5カ月ぶり。

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 菅退陣という“サプライズ”に敏感に反応したのが、日本の株式市場だった。菅首相が党総裁選に出馬しないと伝わったのは3日の昼前後。すると、昼休み明けの東京証券取引所では取引の再開直後から日経平均株価が上昇し、終値は前日比584円高の2万9128円。約2カ月ぶりに2万9千円台を回復し、菅首相の退場を歓迎した形となった。

 りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストはこう言う。

「コロナの新規感染者は増え続け、有効な対策を打てないまま、景気もずるずると悪化してしまう。そんな恐れが強くなっていました。ところが、3日の不出馬表明で『今より悪くなることはない』という期待が相場を押し上げました」

 特徴的だったのが通信関連株だ。

 NTTは前日比2.2%高、KDDIは同3.7%高と、日経平均(同2%高)や東証株価指数(同1.6%高)といった相場全体の値動きを示す指標の値上がり幅を上回った。

 株式評論家の坂本慎太郎さんがこう解説する。

「携帯料金の値下げは、菅首相の目立った実績の一つ。不出馬表明で通信関連銘柄の業績悪化への懸念が薄らぎ、経営の自由度も増すと捉えられた。反対に楽天グループが値下がりしたのは、携帯料金の値下げが同社の携帯事業に追い風になると見られていたからです」

 菅首相が地銀再編や脱炭素に取り組んできたこともあり、銀行やエネルギー関連株なども思惑が交錯したようだ。

 では、経済界や市場は次の首相に何を期待しているか。前出の黒瀬さんは「当面はコロナ対策と景気対策の二つが焦点」と指摘する。

「二つの対策は、菅首相ではいずれも限界が意識されていました。これに対して、いち早く立候補を表明した岸田文雄前政調会長は、感染症の危機管理を一元的に担う『健康危機管理庁(仮称)』の創設や、数十兆円規模の新たな経済対策を公約に掲げ、この二つに重点的に取り組む方針を打ち出しています。少なくとも、今よりは良くなる期待感があります」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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