(2)炊き出しによる食中毒

「ボランティアや被災者自身による炊き出しは『これはどうしよう?』『これは誰がやろう?』といちいち話し合いながら進めるようです。そのため時間がかかり食材が傷み、食中毒を起こすケースがあります。リーダーが指示を出して素早く動くことが必要です」

(3)食の知識の不足

「カップ麺を300個も備蓄していた避難所が、1個も出さなかったんです。理由は『お湯を沸かせないから』と。でもカップ麺は水でも15~30分つけておけば、十分おいしく食べられます。そのことを知らずに、せっかくの備蓄品を提供しなかったわけです。また、これは冬に豪雪で避難した経験のある人から聞いたのですが、塩のきいたおにぎりが出されたそうです。塩分は冷えた体からさらに熱を奪ってしまいます。できれば温かい汁ものを出していただければ」

 食の知識を身につけたリーダーが被災地で指揮を執るようになるには、まだまだ時間がかかるだろう。被災者一人ひとりが、自分と大切な人を守る必要がある。日頃からの備えについて、中村さんはこう助言する。

「被災直後の避難所では、おにぎりやパンといった炭水化物しか配られないことがほとんど。ビタミンやタンパク質はとれません。ですから避難バッグには、野菜、肉、魚の缶詰や乾燥野菜も入れておきましょう。非常食のお湯を注ぐご飯や缶詰のパンは嚥下しにくいので、特にお子さんやお年寄りには、ひと工夫が必要です。たとえば真空パックの稲荷ずし用味付き稲荷揚げを用意。非常食用のご飯をこれに詰めるだけで、稲荷ずし風になります。味が付くうえ、揚げの汁で嚥下しやすくなります。水分の少ない缶詰のパンには、ジャムやチョコレートソースなど油分のあるものを塗ると食べやすくなります」

 この助言を聞いてうなずいたのは、東日本大震災で150日間も避難所で過ごした経験のある岩手県釜石市の菊地信平さん。「ごはんですよ!」のおかげで、炭水化物だけの初期配給生活を乗り切れたという。

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