監督 トマス・ヴィンターベア/9月3日から新宿武蔵野館ほか全国公開/117分 (c)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.
監督 トマス・ヴィンターベア/9月3日から新宿武蔵野館ほか全国公開/117分 (c)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.
監督 トマス・ヴィンターベア/9月3日から新宿武蔵野館ほか全国公開/117分 (c)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.
監督 トマス・ヴィンターベア/9月3日から新宿武蔵野館ほか全国公開/117分 (c)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

 9月3日から映画「アナザーラウンド」が全国公開される。カンヌ国際映画祭に選出されて以来、世界中のさまざまな映画祭で受賞を果たし、アカデミー賞では監督賞も含め2部門でノミネート。見事、国際長編映画賞を受賞した。監督はデンマークが世界に誇る名匠トマス・ヴィンターベア。

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 マーティン(マッツ・ミケルセン)は冴えない高校教師。仕事も家庭もあまりうまくいっているとは言えない。

 ある日、マーティンと同僚3人は、ノルウェーの哲学者の「人間は血中アルコール濃度を0.05%に保つことでリラックスした気持ちになり、人生が向上する」という理論を証明しようと、仕事中も一定量の酒を飲み、ほろ酔い状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ちて、生き生きとしたものになっていく。生徒たちとの関係も良好になり、家庭も円満に。同僚たち3人も確実に人生がいい方向に向かっていた。しかし、実験が進むにつれ、酒量が制御不能になり──。

 本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
おバカな試みをする4人組教師たちがいとおしい。その試みの進行する過程の学園生活、家庭の様子など、人間関係の変化をうまく見せて、最後を元ダンサー、マッツ・ミケルセンの魅力で明るく締めくくるのがカッコいい。

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
自分を変えたいという男たちの欲求が、アルコールの実験をエスカレートさせていく。ヴィンターベア監督は、人間の心理を鋭く掘り下げ、中年の危機を乗り越えて自己を確立するための通過儀礼を鮮やかに描き出している。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
最初はこの4人のオジサンが可愛くて、しかも日常が変化して程良いユーモアも微笑ましかったけど、徐々に様子が変わって不安に。人生は確かに好きに生きればいいけどほどほどに。母国の作品に出るマッツはいいね!

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
適度な飲酒が及ぼす人生への効果という題材を、ここまで深い人生観の映画に仕上げていることに、作り手の人間性の素晴らしさと人間を信用する強さが表出。最後の突き抜け方に心が躍り、今年のベストのひとつ。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2021年9月3日号