東海大菅生戦でバックスクリーンに本塁打を放った大阪桐蔭の花田 (c)朝日新聞社
東海大菅生戦でバックスクリーンに本塁打を放った大阪桐蔭の花田 (c)朝日新聞社
8月19日の近江─日大東北戦は、五回途中で降雨ノーゲームに (c)朝日新聞社
8月19日の近江─日大東北戦は、五回途中で降雨ノーゲームに (c)朝日新聞社

 第103回全国高校野球選手権大会は異例ずくめとなっている。

【写真】8月19日の近江─日大東北戦は、五回途中で降雨ノーゲームに

 まずは天候。台風の影響で開幕が1日順延されると、その後も長雨が続き、大会第3日が3日連続で順延となるなど、8月21日時点で順延は7度に及んだ。

 降雨ノーゲームの翌20日に再試合を行った日大東北(福島)は近江(滋賀)に敗れた。本来なら13日に行われていたはずの試合。甲子園球場で取材を重ねるスポーツライターの佐々木亨さんはこう指摘する。

「日大東北の宗像忠典監督が試合後のオンライン取材で、『福島大会を勝ち上がった調子のまま試合をしたかった』と悔しそうな表情で話していました。いつ試合が始まるかわからない状況は、球児にとっても調整が難しいのでは」

 無情な降雨コールド試合もあった。第5日の第1試合、東海大菅生(西東京)対大阪桐蔭は大会屈指の好カードだったが、東海大菅生が3点を追う八回の攻撃中に雨脚が強まり、中断。打者の手からバットが滑ってすっぽ抜けるなど試合が続けられる天候ではなく、そのままコールドとなった。

 長引くコロナ禍も甲子園に影を落とす。選手らに感染者が出たため、宮崎商と東北学院(宮城)の2校が出場を辞退。宮崎商は初戦を待たず、東北学院は初戦を突破しながら、甲子園を去ることになってしまった。

 それでも、選手たちの熱戦は続く。出場校の初戦が終わった時点で先発投手が完封した試合が七つと、投手の活躍が目立つ。同じく現地で取材を続けるスポーツライターの安倍昌彦さんに、初戦できらりと光った選手を聞いた。まず名前が挙がったのは初出場・京都国際の左腕・森下瑠大。

「メンタル面がピカイチで2年生とは思えないほど落ち着いていた。速い直球と遅い直球を使い分け、変化球も豊富」

 二松学舎大付(東東京)の左腕・秋山正雲と専大松戸(千葉)の右腕・深沢鳳介も注目だという。

「秋山はフォームが理想的で、直球の切れも抜群。球持ちがよく、球の出所が見えづらい投球は杉内俊哉を彷彿とさせる。深沢は心身ともにタフ。制球力が素晴らしく、試合終盤でも投球の8割近くがミットを構えたところに収まるのは驚異的です」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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