帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回は「暑い夏の過ごし方」。

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【養生訓】ポイント
(1)貝原益軒の『養生訓』にも夏は保養すべきとある
(2)少なめに飲食、冷たい生ものをさけて、冷水もNG
(3)でも、冷えたビールと冷たい生ガキはやめられない

 今年の夏も暑いですね。暑い夏は体の調子を崩しがちなので、注意が必要です。貝原益軒の『養生訓』巻第六(慎病)にもこう書かれています。

「四季の中で夏はもっとも保養に心がけなければならない。霍乱(=かくらん、暑気あたりの諸病)・中暑(暑気あたり)・傷食(食べすぎ)・排瀉(下痢と嘔吐=おうと)・瘧痢(熱をともなう下痢)などにかかりやすい。冷えた生ものの飲食を禁じて、注意して保養するがよい。夏にこれらの病気になると、元気を失い衰弱してしまう」(『養生訓 全現代語訳』伊藤友信訳、講談社学術文庫)

 益軒は具体的な注意をいくつも挙げています。

(1)「涼風に長く当たってはいけない。入浴したあとで、風に当たってはいけない」。これは汗が出て人間の皮膚が開くために、外邪が侵入しやすいからだというのです。

(2)「なるべく少なめに飲食するのがよい」。夏は陰気が体内にかくれているため食物の消化がおそいからだといいます。

(3)「温かいものを食べて脾胃をあたためるがよい。冷水を飲んではいけない。冷たい生ものはすべてよくない。冷えた麺も多く食べてはいけない」。夏には冷たい素麺(そうめん)などが人気ですが、これも食べすぎるなとのことです。

(4)「冷水に浴してはいけない。ひどく暑いときも、冷水で洗面すると眼をわるくする。冷水で手足を洗ってもいけない」。冷たい水は全面的によくないようです。

(5)「睡眠中には、ひとに扇であおがせてはいけない。扇の弱い風でもわるい。風に当たって寝てはいけない。夜、外で寝てはいけない」。もし江戸時代にエアコンがあったなら、つけっ放しで寝るなど、もってのほかと言ったでしょう。このほか「夜、外気の中に長く座って夜露に当たるのは害になる」「酷暑のときでも涼しすぎてはいけない」などと語っています。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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