山本さんにとって絵を描くのは毎日の楽しみ。 (撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
山本さんにとって絵を描くのは毎日の楽しみ。 (撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
毎月1回の楽器練習会では音楽家・折山もと子さん(左)の指導も受けている(提供写真)
毎月1回の楽器練習会では音楽家・折山もと子さん(左)の指導も受けている(提供写真)

 軽度認知障害(MCI)からリバーター(元の健常な状態に戻った人)となった、と3年前に朝田隆医師から言われたぼく(フリー記者・山本朋史)は、いまも認知症早期治療を続けている。通算7年半になる。リバーターへのキーワードは「継続」だ。しかし、これは簡単なことではない。5年ぶりの掲載となった実体験ルポ「ボケてたまるか!」第4弾<下>は、「継続のコツ」について。

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 専門医によると、もの忘れ外来で受診した人たちの対応は、大きく次の3パターンに分かれる。

 (1)早期発見→早期絶望
 (2)認知症の疑いを完全否認する
 (3)認知症との徹底抗戦

 ぼくの場合は(3)と主治医の朝田隆医師はいう。「徹底抗戦」などという勇ましい意識はみじんもなかった。でもガンバロウ、と心に決めていた。誰もができる簡単なことがリハビリにつながるのだ。それを黙々と続けた結果が効果を生んだのではないか。

 朝田医師によるとデイケアに通い始めても数カ月でやめてしまう方も多いそうだ。ぼくだって最初は、

「こんなので効果があるのか」

 と疑問に思って途中で何度もやめようかと思っただけに、気持ちはよくわかる。しかし、継続が大切だとそのたびに忠告された。

 認知症のリスクを減らすトレーニングに即効性はない。半年とか1年続けてこそ、それも少しずつ効果が認識できる種類のものだ。ホウレン草を食べたポパイが急に強くなって乱暴者を懲らしめるのは漫画の世界で、青魚をはじめ認知症防止に有効とされる食品があるけれど即効を期待するべきじゃない。食事だったら結果が出るのは数年後が当たり前だ。

 高齢者の4人に1人が認知症またはMCIと言われ、国内の患者数は合わせて800万人以上と推定される。しかもコロナ禍が続き、自宅にこもって生活する高齢者も増えた。認知症リスクはさらに増大している。ぼくが週1で通うメモリークリニックお茶の水のデイケアでも、外出自粛のために一時期デイケアに来られなくなった人が急増した。そのため外部講師のプログラムも休止せざるを得ない時期も続いた。

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