桂 望実(かつら・のぞみ)/1965年、東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、2003年『死日記』でデビュー。05年刊行の『県庁の星』が翌年映画化され大ヒット。他の著書に『嫌な女』『僕は金になる』『総選挙ホテル』など。(提供)
桂 望実(かつら・のぞみ)/1965年、東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、2003年『死日記』でデビュー。05年刊行の『県庁の星』が翌年映画化され大ヒット。他の著書に『嫌な女』『僕は金になる』『総選挙ホテル』など。(提供)

 作家・桂望実さんの最新作『終活の準備はお済みですか?』(KADOKAWA、1760円・税込み)は、葬儀会社千銀堂の子会社満風会の終活相談員・三崎清とそこに集う老若男女の交流と、それぞれの“終活”を描いている。

「私自身、いつ親が亡くなってもおかしくない年齢になりましたし、知人の親が亡くなることも増えてきました。その時よく聞くのが『親が生きている間にもっとこうしておけばよかった』という後悔話。そういう意味では未婚既婚、若者老人に関係なく人生の閉じ方を考えることは共通のテーマになりうるのではないか、と思ったのがこの作品を書くきっかけです」

 どうしても“終活”と聞くと、人生の終え方の物語と思われがちだが、今作は「そこに至るまでにどれだけ自分らしく生きられるか」を描いたのだと桂さんは言う。

 5人5様の「終活」は、そのどれもが時に切なく、心に響く。例えば、3人兄弟の68歳になる末っ子の発案で、カッコよくて憧れの存在だった長兄が認知症になったのを機に、キャンピングカーで旅をするという第二章。長兄に寄り添う弟たちの姿が実に微笑ましい。

「子供みたいなお兄ちゃんに接していくことに最初は弟たちも葛藤があったと思います。でも、それが今後の3兄弟の新しい関係性になっていくわけで、それはそれで幸せな人生なのかなって」

 葬儀、ましてや人生のエンディングをテーマにする作品はどうしても暗くなりがちだ。だからこそ桂さんは読後感に人一倍こだわっている。

「プロの作家になる前、友人に私の書いた小説を読んでもらったことがあるんです。そしたら『お金を払ってこんな救いのない小説は買わない』と言われたんですよね。その時に世間の人は明るい兆しや、明日元気になれそうといったものを本に求めているんだということを思い知らされて。それからは、“読後感”にはすごく気をつけています」

 さて、50代半ばとなったご自身の年齢をどう捉えているのだろう。

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