東尾修
東尾修
五輪ソフトボール優勝を喜ぶ日本代表の上野由岐子(中央)ら=2021年7月27日、横浜スタジアム (c)朝日新聞社
五輪ソフトボール優勝を喜ぶ日本代表の上野由岐子(中央)ら=2021年7月27日、横浜スタジアム (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、東京五輪で金メダルを獲得したソフトボール日本代表の重圧、野球日本代表の初戦などについて語る。

【写真】五輪ソフトボール優勝を喜ぶ日本代表の上野由岐子選手ら

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 東京五輪も中盤に差し掛かり、野球競技もスタートした。テレビでじっくりと見させてもらったが、7月28日の日本の開幕戦、相手はドミニカ共和国だった。2点を追う九回に追いつき、なおも1死満塁から巨人坂本勇人が中越えに決勝打を放った。苦しみながらも初戦を白星で飾ったという点は評価したい。

 初戦ということで硬さはあるだろうが、相手国の救援投手のレベルが下がったから勝てたと言わざるを得ない。先発は巨人に所属するメルセデスだったが、完璧に封じ込められた。ただ、2番手以降の投手があれではね。後ろにいい投手が1、2枚いたら、負けていた可能性は高い。

 金メダルを獲得したソフトボール。はっきり言って、1次リーグで2位以内に入って決勝に行かないといけないから、最大のライバルである「米国戦」まで1敗もできないという緊張感があった。そして決勝戦。上野由岐子から後藤希友、リエントリーで上野とつないで頂点に立った。最終回、後藤ではなく、再びマウンドに上野をあげた。最後の3アウトを取る重圧、しかも2008年の北京五輪から13年分の思いを背負えるのは、上野しかいなかった。

 ソフトボール界の五輪にかける思いは、野球の比にならない。そういう戦いを見た後だからだろうか。野球は、負けても次がある、ヘンテコな大会方式である。選手のモチベーションがどこまで高められているか、という思いはどうしても残ってしまう。そして相手国の戦力。試合を重ねるにつれ、日本は良くなっていくだろうから、その差は出てくるだろう。

 投手陣を見ると、青柳、平良、栗林といった代表の経験値のない選手を初戦に起用できたのは良かったと言える。ただ、2番手の青柳は、いきなり4番の左打者からだった。短期決戦、国際大会では、2度失点した投手は使えなくなる。青柳は左打者を抑えているといっても、それは日本のシーズンの話。右下手投げの投手は、左打者に球の軌道が見えやすくなるのだから、もっと楽な場面とか、ワンポイントとかで起用してあげても良かったなと感じる。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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