大技を決め「ストリート」金メダリストになった堀米雄斗(左)と西矢椛
<br /> (c)朝日新聞社
大技を決め「ストリート」金メダリストになった堀米雄斗(左)と西矢椛
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 スケートボードストリートで日本の男女が金メダルを独占した。今大会の五輪から正式種目となったスケートボードの「ストリート」と「パーク」。街にあるような階段や手すり、縁石やベンチなどをさまざまな技で滑るのが「ストリート」。男子では堀米雄斗(22)が「絶対王者」のナイジャ・ヒューストン(26)=米国=をおさえて地元・東京都江東区の会場で頂点に輝いた。女子では西矢椛(もみじ、13)が金、中山楓奈(16)が銅メダリストに。44年のキャリアを持つスケートボーダーの秋山勝利さん(59)は、若い世代が強い理由をこう語る。

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「本人の努力はもちろんですが、親御さんがレッスンの機会を与え、スクールや大会で経験を積む。たくさんの試合を通して勝ち上がり方を学べる。それが大きな場で実力を発揮できることにつながるのです」

 情熱があるプロショップの存在も大きいという。「昔に比べて道具も良くなっている。教えてくれる人もいる」(秋山さん)

 ムラサキスポーツもアスリートを支援している。同社マーケティング部の遠藤大輔さんも「パークも増え、早くからスケートボードに触れる子どもたちが多くなったことが大きい」と話す。西矢が始めたのは6歳。日本勢史上最年少金メダリスト誕生の瞬間を見届けた遠藤さんが「やったじゃん」と西矢に声をかけると、「ぽかんとしていましたね。西矢選手は単純にスケートボードを楽しんでいました。それが強かったと思います。プレッシャーを感じるタイプの中山選手も、西矢選手がいたことでリラックスできたと思います。ふたり、仲が良いんです」。

「競技」になったとはいえ、スケートボードはそもそも自分を表現する「カルチャー」。実況解説者もこぼした「やっべぇ」(やばい)くらいカッコイイ技を決めたい、というのが多くのスケーターの思いのようだ。

 西矢が最後に決めた360度横に板を回転させた後にレールに乗る「ビッグスピンボードスライド」は世界選手権でミスをした技という。だが回避をしなかった。

 一躍注目を浴びたスケートボード。とはいえそんな簡単にできるものでもなさそうだ。日本スケートボード協会の関係者は、こう警鐘を鳴らす。

「そもそもスケートボードは危険を伴うスポーツです。きちんとした専門店でボードを買って、正しい知識とルールを身に付けた上で、人に迷惑をかけない場所を選んで、取り組んでほしい」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2021年8月13日号