日本五輪競泳では2008年北京五輪の北島康介以来となる2冠を獲得した大橋悠依(中央) (撮影/写真部・松永卓也)
日本五輪競泳では2008年北京五輪の北島康介以来となる2冠を獲得した大橋悠依(中央) (撮影/写真部・松永卓也)

 東京五輪に二人の大橋悠依がいるようだった。

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 競泳女子個人メドレーで夏季五輪の日本女子として初の個人2冠を果たした25歳は、不安を振り払うような表情で挑んだ7月25日の400メートルに快勝すると、3日後の200メートルは一転、自信に満ちあふれたレースで鮮やかな逆転勝ちを収めた。

 五輪で日本女子初の個人メドレー金を取った400メートルの後は涙を流し、「これまで全然ダメダメで……。取れるとも思っていなかったので」。一方、200メートルの後は「今日は自信もありましたし、すごく楽しんでレースができました」と笑顔がはじけた。

 泳ぎの切り替えも完璧だった。長距離の要素が強い400メートルはワルツのリズムを刻むような力みのない大きな泳ぎ。スピードが求められる200メートルはピッチを上げロックンロールのビートに乗るような切れが光った。

 遅咲きの大輪だ。

 滋賀・草津東高時代は目立った成績は残していないが、東洋大水泳部の平井伯昌監督が将来性を見込んで勧誘した。大学1年のときから「水をキャッチするテクニック、抵抗の少ない水中姿勢」が注目されていた。

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