左から金丸信吾氏、木村三浩氏、孫崎享氏 (撮影/写真部・加藤夏子)
左から金丸信吾氏、木村三浩氏、孫崎享氏 (撮影/写真部・加藤夏子)
1990年の訪朝時の写真(金丸信吾氏提供)。左から金丸信氏、北朝鮮の金日成主席、田辺誠社会党副委員長(肩書は当時)
1990年の訪朝時の写真(金丸信吾氏提供)。左から金丸信氏、北朝鮮の金日成主席、田辺誠社会党副委員長(肩書は当時)

 約30年前、金丸信・元副総理が訪朝し、日朝国交正常化に歩み出した。金丸・元副総理の次男・金丸信吾氏も民間人でありながら、長年にわたり訪朝を重ねている。だが、未だに日本人拉致問題も北朝鮮の核開発も進展を見せていない。北朝鮮との外交交渉を進めるには何が重要なのか。「2002年に調印された日朝平壌宣言の原点に戻ってやり直すほかない」と主張する金丸氏が、外交評論家の孫崎享氏、一水会代表の木村三浩氏と語り合った。

【写真】1990年訪朝時の金丸信氏と金日成主席

前編/北朝鮮問題の突破口は「二階訪朝団」 孫崎享×金丸信吾×木村三浩】より続く

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孫崎:私は、菅義偉首相が平壌宣言の精神に立ち返ることはできないと見ています。小泉純一郎元首相は日本独自で日朝交渉を進められると考えていたわけですが、米国の怒りを買いました。平壌宣言の後、すぐに当時の米ブッシュ政権から小泉さんは厳しく糾弾されました。北朝鮮が核の凍結に合意しない間は、日朝交渉を進めてはならないと言われ、結果的に前進しなかったのです。

金丸:ええ、そうでしょうね。

孫崎:ですから、平壌宣言はすべて空文化されています。その状況が現在も続いていて、おそらく自民党にも立憲民主党にも、米国の反対を押し切って独自の外交をやろうというガッツのある政治家はいまの日本にはいないと思います。

 米大統領選でバイデン氏を最もバックアップしたのは、国防総省と軍需産業でした。トランプ氏は海外の米軍基地は不要と言い、アフガニスタンからも米軍を完全撤退させた。こうしたトランプ氏の政策に、軍産複合体が抵抗したのです。ですから、いまのバイデン政権は安全保障政策では完全にタカ派の支配下にある。バイデン大統領は、トランプ氏のようにトップ会談で対話するという手法は取らないでしょう。日本の政界と官界も、米国に追随するほかないと考えているはずです。

木村:米国の外交政策は一貫しているわけではありません。トランプ氏と異なり、オバマ氏は「戦略的忍耐」と称して、北朝鮮が非核化に向けて具体的な取り組みをするまで対話には応じないという方針でした。

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