田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、急拡大する新型コロナの新規感染者数による、菅義偉内閣崩壊の可能性を示唆する。

【写真】二階幹事長が推すポスト菅の大穴はこの人 

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 東京五輪は23日に開会式が行われたが、それに先立って21日には、東日本大震災の被災地、福島県でソフトボール競技が行われ、札幌ドームではサッカー女子日本代表の試合が行われた。

 ところが、新型コロナの新規感染者数は、東京都内で21日に1832人、22日は1979人と、直近1週間の平均新規感染者数は1373人なので、前週の1.5倍に急拡大しているわけだ。明らかに重大なリバウンドである。

 感染症対策分科会の尾身茂会長は20日に、日本テレビの報道番組で、東京都の1日の新規感染者数について、8月第1週には過去最多の3千人近くまで増加するとの見通しを示した。尾身氏は、ワクチン接種が進んでも、「東京では入院の患者が増えている。このままのスピードで感染が広がると、医療の逼迫(ひっぱく)がまた起きてくる可能性が極めて高い」と指摘している。

 リバウンドの要因になったのは、感染力が極めて強いインド型変異株(デルタ株)が急速に広がったことだが、その大本は水際対策の失敗である。

 分科会の小林慶一郎氏が「文藝春秋」8月号で書いているが、小林氏は、ゴールデンウィークの前に、早急に水際対策を強化すべきだと分科会の場で強く主張したということだ。オーストラリアやニュージーランドなどは、入国者に対し14日間の宿泊施設での待機という厳しい水際対策を取って、新型コロナのシャットアウトに成功している。だから、日本も同様の水際対策を取るべきだと、小林氏は何度も主張したのだが、厚生労働省やそれに同調する自民党の国会議員たちの反対で、「幻の提言」となってしまったのだという。

 朝日新聞が17、18日に実施した全国世論調査では、菅義偉内閣の支持率は31%(前回6月は34%)で、昨年9月の政権発足以来最低となった。なお、不支持率は49%(前回42%)となっている。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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