女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した大橋悠依/2021年7月25日(c)朝日新聞社
女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した大橋悠依/2021年7月25日(c)朝日新聞社
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長

「自分が金メダルを取れるなんて思ってもいなかった」

【写真】まだまだ見たい! 大橋悠依選手はこちら

 東京五輪の競泳女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した大橋悠依(25)は、直後のインタビューでこう喜んだ。東洋大学の在学中に故障や体調不良に悩み「絶不調」を経験。だが、同大の監督で、競泳日本代表ヘッドコーチでもある平井伯昌監督の指導を受けて、大きく成長した。

 その平井ヘッドコーチは「週刊朝日」の連載で大橋選手の金メダルの可能性についても言及していた。大会前から「午前決勝」をポイントにあげていた平井コーチ。6月25日号の連載で語っていた言葉を紹介する。

*   *  *
 6月3日から6日まで千葉県国際総合水泳場で開かれたジャパンオープン2021に、競泳日本代表チームとして出場しました。

 東京五輪でメダルを狙う選手たちの多くが、五輪を想定した泳ぎを見せていました。自由形の松元克央、背泳ぎの入江陵介、バタフライの水沼尚輝らは午前決勝の五輪に合わせたレースをしていた。私が指導する個人メドレーの大橋悠依も予選から積極的なチャレンジができていました。

 日本代表チームは5月31日から6月6日までの第2次合宿の期間中に出場した試合でした。コーチ、スタッフもミーティングを重ねて、チームの結束力を高めていきました。思うように力を発揮できなかった選手もいましたが、実績のある選手が予選からしっかり泳いでいるのを見て、全体の雰囲気が後半ピリッとしてきたところがあります。

 4大会連続の五輪出場となる31歳の入江は、はつらつとした泳ぎでチームを引っ張っています。長いキャリアの中で苦しい時期もありましたが、地元五輪に照準を合わせて調子を上げている。のびのびやってくれているのを見ると、こちらもうれしくなります。

 ジャパンオープンでは五輪代表以外の選手の活躍も目を引きました。東京五輪を目指しながら代表選考会では十分に力が発揮できなかった選手たちが、シーズンに向けて記録を伸ばしている。新しい選手が出てきて世代交代が進むのは五輪イヤーによく見られることです。今回は女子の中学生で決勝に残った選手も多く、競泳委員長、日本代表ヘッドコーチとして、明るい未来を感じています。

著者プロフィールを見る
平井伯昌

平井伯昌

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

平井伯昌の記事一覧はこちら
次のページ
「午前中」に合わせてレース