舞台「鬼滅の刃」其ノ弐 絆8月7~31日、東京の天王洲 銀河劇場やTACHIKAWA STAGE GARDEN、大阪の梅田芸術劇場で上演。(撮影/木村哲夫)
舞台「鬼滅の刃」其ノ弐 絆8月7~31日、東京の天王洲 銀河劇場やTACHIKAWA STAGE GARDEN、大阪の梅田芸術劇場で上演。(撮影/木村哲夫)

 大ヒット漫画「鬼滅の刃」は昨年舞台化され、今夏、新作が上演される。臆病ですぐに泣き叫ぶ人気キャラ「我妻善逸(あがつまぜんいつ)」を演じるのは、漫画やアニメが原作のいわゆる「2.5次元」の舞台で活躍してきた植田圭輔だ。役者として人々の注目を一身に浴びる植田は、善逸が抱える恐怖を「手に取るようにわかる」と話す──。

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──前作で善逸を演じた感想はいかがですか?

 こんなにのどを気にしなきゃいけない役ってレアですよ(笑)。原作で「゛ア~~(汚い高音)」って書かれている台詞なんかも再現しなくちゃいけない。

 僕は、素の笑い方が「ギャハハハ」って悪魔みたいなので、声を無理に作る必要はなかったんですけど、思ったままやると一日も持たない。だから、今日は右寄りの声帯を、今日は上側を……って使い分けて乗り切りました。

 善逸ってギャーギャー騒ぐ簡単な役に見えるけど、実はすごく難しい。早口でまくし立てても聞き取れないし、生身の人間がやるとすぐ疲れる。その中でも台詞を届かせられる技術力が問われるんです。原作を読んだ時からその難しさに気づいて、挑戦したいと思っていた役でした。

 鬼滅って、つらく悲しい状況で主人公の炭治郎が踏ん張るシーンが多いですよね。そんな中、善逸を見ているとクスッと笑ってしまう。「いてよかった」と思える存在になれるよう意識しました。

 善逸は耳がよくて、音で相手の性格や考えてることが聞き分けられます。それゆえの繊細さ、怖さって手に取るようにわかるので、そこは大切にしたい。人間って誰しも、誰かの悪意なんて触れたくないですから。

──国民的漫画の人気キャラを演じたわけですが、街中で「善逸の人だ」と気づかれたことは?

 劇場版を見に行った時、映画館に舞台のチラシが飾ってあったんです。それを見て「舞台の鬼滅だー!」ってお母さんと騒いでる子が目の前にいました。「俺やで」って思いながら聞いてましたけど(笑)。2.5次元って世界観やキャラクターのメイクを作りこむので、気づかれないほうが成功かなと思います。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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