提供したのは当時の次長とのことだが、この一件がマトリの捜査官の士気が低くなっている理由の一つと関係者は語る。

「この当時の部長は今年の3月に退任しましたが、再任用で新たにポストを作って調査官という肩書で人事権を掌握しました。一番重い処分を受けた次長は一度地方に飛ばされ定年になりましたが、同じく再任用されて捜査官になっています。また、処分された課長も異例の出世をこの春にしました」

 この異例の出世は、当時の部長をかばった論功行賞人事と内部でささやかれた。当時の部長の時にマトリは、先の情報漏洩(ろうえい)問題のほかにもいくつかの“大失態”を犯している。

 一つは横浜第二合同庁舎にある関東信越麻薬取締部横浜分室の火災だ。赤レンガ造りの分室から燃え上がる火の粉の映像が流れていたので、ご記憶の読者もいると思う。

 この分室がある横浜第二合同庁舎は歴史的建造物として知られ、多くの観光客が見学に訪れるほか、他の役所の分室なども入っている。大事な建造物での失火はもちろん、この火災で多くの機材や備品などが焼失した。保管されていた証拠も影響を受けているのでは、との声も聞こえてくる。原因についてもはっきりとしていない。

 また、昨年10月には外国人による薬物事案の摘発の際に、「慣れない指揮官の誤った指示」(マトリ幹部)のせいで、現場の捜査官が外国人の乗ったクルマにひかれそうになり、容疑者には逃げられた。捜査官もけがをしたという。前出の関係者は、「外国人が車から降りてくる前に『GOサイン』が出たために招いた失態だ」と指摘する。

 マトリの広報担当に確認したところ、横浜分室の火災については、「県警と消防の発表で充電中のバッテリーからと報道されていますが、この件についてはマトリは発表していません」とし、正式な原因解明には至っていないとしている。また、外国人容疑者の逃亡については、「捜査上のことなので、発表は一切しない」とのこと。

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過酷な張り込みや捜査も報われない