さらに、がん予防にも効果が期待できる。老化細胞の蓄積は炎症性物質の産生につながり、遺伝子を傷つける。傷つけられた遺伝子はがん化しやすくなる。老化細胞を取り除けば、がん化しにくくなるというのだ。

 老化細胞の除去こそが健康寿命を延ばすカギになる。これは他の動物の例からも言えるようだ。

「例えばゾウやハダカデバネズミは加齢に伴う老化現象が見られず、人間と違って年をとっても死亡率が上がらない。これは老化細胞が自然に死んでしまうようにできているから。非常にがんになりにくいと考えられます」

 2020年の厚生労働白書によれば、平均寿命(男性:80.98歳、女性:87.14歳)と健康寿命(男性:72.14歳、女性:74.79歳)には10年ほどの開きがある。この差がゼロに近づけば、社会構造は大きく変わるはずだと中西教授は話す。

「その10年間は多くの人が医者にかかったり、介護を受けたりする期間。この差がなくなれば、高齢者が当たり前に働き、積極的に社会に貢献する時代になる。老害という言葉が死語になる可能性もあります」

(福光恵/本誌・秦正理、大谷百合絵)

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週刊朝日  2021年7月23日号

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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