このeNAMPTは、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)という物質をつくりだし、NMNからはさらにNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)が合成される。どちらも舌を噛みそうな名前だが、このNADこそ生命活動に必須の物質。NADも老化によって減少することから、NMNやNADが抗老化の重要な要素として注目を浴びるようになった。

 これまでの研究では、NMNをマウスに投与することで、糖尿病、アルツハイマー病、心臓病などさまざまな疾患への効果が証明されてきた。4月に発表された今井教授らの研究では、人にNMNを投与。血糖値を下げるインスリンの働きを骨格筋でアップさせることがわかった。

「今回の研究は、人への抗老化効果を検証する上での第一歩。今後、投与する量や期間を増やすことで、より本格的な効果が明らかになる可能性があります」(今井教授)

 未来の「抗老化ピル」候補として有力なNMNだが、実は6年前から日本企業が世界に先駆けて製品化しており、「サプリ」のような感覚で入手できる。堀江貴文さんなど有名人の愛飲者も多いが、今のネックは価格。1カ月分数万円から、なかには15万円ほどする高価なものもある。かと思えば数千円程度のものもあるが、手頃な価格のNMNに飛びつくのは要注意と今井教授は強調する。

「実際に分析したところ、不純物が多く含まれる低品質のものも少なくなかった。メーカーは成分の情報を開示すべきですし、消費者は価格や口コミだけで選ばず、専門の研究者の発信する情報に耳を傾けていただきたい」

 今井教授の予測では、今後4~5年のうちに普及が進めば値下がりし、最終的に1カ月数千円程度で良質なNMNを入手できる日が来るという。

 そんなに待てない、という人のために、今できることも聞いてみた。

 まずは、運動。といってもアスリートのような負荷はいらず、軽い運動だけでNADの合成が促進されるという。もう一つは食事だ。

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