そして共産党が、世界で最も信頼できるのはソ連だと強調していたので、私もそれを信じていた。だが、1965年に世界ドキュメンタリー会議が開催されたとき、なぜか日本から私が選ばれ、開催地のモスクワに飛んだ。そこで、ソ連には実は、言論・表現の自由というものがまったくないことを知ったのである。

 実は、共産党も幹部の言うことに反論はできず、厳密に言えば、言論の自由はない。そこで、80年代に上田氏に「あなたが共産党を離党したら、私はあなたを全面的に応援するのだが」と本気で言った。すると上田氏は、「それはありがたいが、共産党だとナンバー2だが、離党するとただの一人になってしまうからね」と、極めて苦しそうに言った。そういう、言ったら損になる本音を言うところを私は信頼しているのである。

 また、不破氏に「あなたが、この国は本気で認められるという共産主義の国はどこか」と問うと、「残念ながら現在はない」と答え、「では、あなたの主張は空理空論ではないか」と突っ込むと、「だから何とかして構築しなければならない」と苦しそうに述べた。不破氏もまったく駆け引きをしない人物なのである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年7月23日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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