長年、電話相談を受けてきた「日本いのちの電話連盟」(東京都千代田区)によると、昨年1年間にあった相談は約52万8千件で、そのうち「自殺したい」と話すなど自殺傾向があると判断されたのが11.5%。フリーダイヤルの相談件数は10代以下が最も多い。

「悩み相談と心の対話の場所」を提供するNPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」(東京都豊島区)のカウンセリングセンター長、新行内勝善さんは、近年の変化を次のようにみる。

「昔は家族や親戚など人間関係が広かったが、いまは限られた人間関係になっています。友人関係も同様です。人に対して警戒する社会的な背景もあり、知らない人とは話さない社会状況があります。とくに若者は、友人同士で話はしても、(深刻な身の上)相談するという文化があまりないのではないか」

 相談者をみると、貧困など経済的理由というよりも、精神的に追い込まれたり、他に手段のなかったりする人が増えているようだという。「まじめで人に迷惑をかけてはいけないという教育を受けている人が、追い詰められて相談にくる」(新行内さん)

 孤立する若者も支援してきた「北海道セーフティネット協議会」(北海道釧路市)の高橋信也事務局長も、かつてのような家族や近所の人たち、友人などのつながりが薄れ、若者を支える安全網が脆弱(ぜいじゃく)になってきたと感じる。

「機能不全の家庭で育ち、虐待など暴力や抑圧状態に長くさらされると、精神的な安定を得られず、人間関係の構築が難しくなります。本当に支援を必要としている人に、いつも支援が届きにくいと感じています。精神疾患などで医療関係者につながったときに初めて支援が始まるといった事例をいくつもみてきました」

 だからとにかく、勇気を持って“SOS”を発してほしい──。とくにコロナ禍では、入学してもオンライン授業などが続き、知り合いや友人ができにくい環境にある。上の表を参考にして、悩みを抱え込まずに相談を。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年7月16日号