エンリッチは2018年にサービスを始め、今春で40~60代を中心に約3千人が登録し、女性が6割を超える。30代以下も目立ち、全体の19%を占める。無料で提供しているのは、寄付金で運営されているからだという。紺野功代表は「本来は人と人がつながり、社会を支えるもの。だれでも簡単に利用できるようにしたい」と話す。

 見守りサービスは昔からあり、一人暮らしの高齢者を対象としたものが一般的だ。

 備え付けのカメラで離れて暮らす家族が確認できたり、緊急ブザーを押せば警備員が駆けつけてくれたりするサービスは知られている。トイレや冷蔵庫のドアの開閉を検知するセンサー機器を活用し、遠隔地にいる家族に安否を知らせるものもある。

 ただし、これらは有料なうえ、身寄りがいることが前提だ。孤独死の不安を抱えている若い世代にとってはハードルが高く、「求めているものとは違った」(関東在住の30代女性利用者)。

 昨年3月にできたNPO法人「あなたのいばしょ」(東京都港区)は、専用サイトのチャットで、頼る人がいない若者からの相談に応じる。件数は約1年でのべ約4万8千。20代以下がほとんどだ。相談者は二つに大別されると、理事長を務める慶応大生の大空幸星さんは指摘する。

 一つが、親からの虐待やいじめなど根本的な原因がある若者。その原因から逃れるために、死にたいと思うのだという。

 もう一つは、学校や家庭でも何となく居場所がなく、モヤモヤした気持ちから自分がいなくてもいいのではと思う若者。根本的な原因はなく、むしろいい子で周囲からは幸せそうに見えるそうだ。

「多くの相談者は死にたいと言う。話をしたことで、また生きてみたい、相談してよかったと言ってもらえた」(大空さん)

 厚生労働省の自殺者統計によると、コロナ禍の20年は10代や20代が前年比で大きく増えた。経済・生活問題や家庭問題などが深刻になり、うつ病などにも連鎖していると分析する。

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