日向史有監督(撮影/写真部・加藤夏子)
日向史有監督(撮影/写真部・加藤夏子)
日本で生きるラマザン(左)とオザン (c)2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.
日本で生きるラマザン(左)とオザン (c)2021 DOCUMENTARY JAPAN INC.

 名古屋出入国在留管理局(入管)で収容中に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの事件を機に、日本における外国人在留資格や、難民への対応に注目が集まっている。しかし、私たちは日本にいる「難民」のいまを、本当に知っているのだろうか──? 7月10日から緊急公開される映画「東京クルド」は、日本で生きるクルド人“難民”の青年、ラマザン(19)とオザン(18)を5年にわたり追いかけたドキュメンタリー。監督の日向史有さん(40)に聞いた。

【写真】日本で生きるクルド人“難民”の青年、ラマザンとオザン

 2015年、日向監督は「日本クルド文化協会」で行われた記者会見で突然、流暢な日本語で意見を述べ始めた高校生に惹きつけられた。それがラマザンだ。

「頭の回転も速く、毅然とした態度にハッとした」と、日向監督は振り返る。さらに彼の幼なじみであるオザンに出会った。

「二人ともルックスも人間的にも実に魅力的でした。ラマザンもイケメンですが、オザンは男の目から見てもカッコよくてまぶしくて(笑)、繊細さと孤独を抱えながらも素直に心を開いて話してくれた。そんな二人に惹かれてカメラを回し始めたんです」

 二人はそれぞれ9歳と6歳の時、迫害を避けるため両親とトルコから来日した。難民申請をしているが認定されない。

そもそも日本の難民認定率は諸外国に比べ極端に低い。19年は1万375人の申請に対し認定は44人。わずか0.4%。出身地による差も大きく、日本には約2千人のクルド人がいるが難民認定者はゼロだ。ラマザンやオザンとその家族は出入国在留管理庁から収容を一時的に解かれる「仮放免」の立場で暮らしている。学校には通えるが就労は許されず、健康保険もなく、いつ入管に突然収容されるかわからない。

 トルコ語、クルド語、日本語に堪能なラマザンはさらに英語力をつけて通訳になる夢を持ち、日々勉強している。通訳専門学校への入学を希望しているが、「仮放免」という立場を告げると、ことごとく断られてしまう。いつも毅然としたラマザンが「正直、疲れちゃった」と吐露するシーンには胸が詰まる。

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