コロナ禍では、検診控えだけでなく、受診控えも問題となっている。がんが見つかるきっかけは、がん検診のほかに、「症状があって受診したら、がんが見つかったケース」や、「ほかの病気で受診したら偶然、がんが見つかったケース」など。

「コロナ禍で受診控えが起こり、それががん診療を遅らせている可能性がある」と指摘するのは、静岡がんセンター病院長の上坂克彦医師だ。

 上坂医師は今年の春以降、進行がんの患者が増えていると感じている。

「胃や大腸の外科を担当する医師や、手術室の看護師から上がってきた報告によると、進行がん、しかもステージ4で手術が難しい事例が増えています。なんでこんな状態になるまで放っておいたのかと思うほど進行している患者さんが、以前も一定数はいましたが、今年は特に多い印象です」

 実際、今年のゴールデンウィークにもこんなことが起こった。

 同センターは救急病院ではないため、よほどのことがない限り休日は緊急手術を行わない。あっても、入院患者が術後の合併症を起こしたときに対応するぐらいで、それも連休中に1件あるかないかだ。

「ところが、今年のゴールデンウィークは3件の手術を行いました。いずれも未治療の進行大腸がんが大きくなりすぎて、腸を詰まらせてしまった事例でした」(上坂医師)

 この3例が、新型コロナの感染を恐れて受診を控えた結果、ここまで進行してしまったのかはわからないそうだが、少なくとも昨年のうちに検便や大腸内視鏡検査を受けていたら、発見できていた可能性が高いという。

 検診や受診控えによるがん診療の遅れは、治療費の面でも大きな負担となってのしかかる。『病気の値段がわかる本』の著者で医療アドバイザーの御喜千代さんは言う。

「例えば大腸がん。早期がんなら内視鏡手術ですみますが、進行がんになると開腹手術、あるいは腹腔鏡下手術が必要になります。体にかかる負担もさることながら、入院期間も、治療費も10倍ぐらい違ってきます」

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