「そうこうするうちに避難情報が防災無線から流れてきたんですけど、私が気づくのが遅かったからか、集合場所に行くと誰もいなくて家で待っていて……。迎えに来てくれて本当に良かった」

 被災地となった伊豆山地区の住民に話を聞くと、口をそろえて「こんな土砂災害は初めて」「災害がないのがいいところ」「地盤もいいところと聞いている」などと話す。

 なぜこうした土石流が起きたのか。

京都大学防災研究所の釜井俊孝教授によると、今回土砂災害で大きな被害のあった集落は、「大昔からくり返し土石流が起きてきたところ」だという。

「その堆積物がたまり、平らになった所ができて人が住むようになり、今の伊豆山の市街地になっているのです。しかし、この数百年くらい土石流は起きなかったと見ています。おそらく数百年くらいのスパンで土石流がくり返し起きてきたと考えられます」

 富士山や箱根山からの噴出物が斜面に堆積し、その斜面にたまっていたものが崩れたのではないか、との見方だ。

「なおかつ、地下水が噴出する構造があるのですが、そういう地盤が不安定化する要因があって、発端となるような崩壊が起き、その崩壊土砂が川に流れ込んで、それが土石流化して今回のような悲劇が起きたのです」

 その上でこう警鐘を鳴らす。

「現時点では崩壊源がわからないから、これで今回の崩壊が終わったのかどうかはわかりません。これからも崩壊が拡大する可能性は十分にあると思います。長期的に言うと、地盤の歴史、自分が住んでいる土地の歴史をきちんと理解しておくことが重要です」

 被害が拡大しないことを願いたい。

(西岡千史、亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事