そこには最初の20人の方々も参加してくれて、もう5年ですね。30年間人工透析をしていたという男性がいて、100メートル歩くのが精いっぱいだったのですが、10キロも歩けるようになって。うれしいですよね。

 コロナ禍になって、ワークショップもほとんどが中止になりました。みなさんに会えなくなって、少し心配です。「(ダレデモダンスの)DVDを家でやってるわよ」って言ってくれるのですが、それでも運動量が減ったりストレスが増えたりすれば免疫力が下がりますから。

 コロナ禍で高齢者の方は家にこもりがちです。せめて家の中でもこまめに動いてほしいです。お茶をいれること一つでも、立ち上がって自分ですることだと思います。

――来年1月に還暦を迎えるSAMさん。実は新たな目標があるという。

 60歳で「過去最高の体」をつくろうと、ジェロントロジーを学び始めたころから筋トレを強化しました。基本は自重での腹筋と腕立て。それで鍛えられない部分はダンベルやマシンを使い、自分のダンススタジオでやっています。腕立て伏せなら1回に合計160回、それを週に2回くらいというペースですね。

 筋肉は20代がピークなどと言われていますが、どんな高齢になっても進化すると講義で学びました。ダンスをするのでボディービルダーのような大きな体にはしませんが、細くてきれいに筋肉のついた、最近はフィジークというそうですが、そういう体を目指しています。

 ジムで個人トレーナーにつくことも考えましたが、それだとストレスになりそうでやめました。運動は強制されてするものじゃないなって思うんです。ダレデモダンスは楽しいからする。そういうふうに思ってもらえるものになっていたらいいですし、ワークショップに来る人たちがいきいきしているので、そういうものになっているのではと思っています。

「リバイバルダンス」という認知症に特化したプログラムも作りました。日本認知症予防学会の専門医の先生に監修をしてもらい、理化学研究所の先生がノルディックウォークなどと比較し、効果を測定してくれています。コロナ禍で遅れていた学会発表が終了次第、秋にもDVDが発売される予定です。

 美空ひばりさんや小林旭さん、キャンディーズに西城秀樹さんらの懐かしいヒット曲に合わせて踊り、脳神経を活性化させるプログラムです。今回学んだことですが、認知症は初期段階なら改善するし、そうでなくても進行を遅らせることはできる。その助けになるのがリバイバルダンスです。

 シニアに大切なのは運動、食事、睡眠、そしてコミュニティー。運動はいくつから始めても、必ず結果が出ます。始めたときがスタート。みなさん、ぜひ始めましょう。

(構成/矢部万紀子

週刊朝日  2021年7月9日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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