予定より早く訪れてしまった愛の最終章をファースとトゥッチという演技派俳優が演じて絶賛された本作「スーパーノヴァ」。監督は脚本も手掛けた新鋭のマックイーン。イギリスが誇る美しい景観を余すところなく捉えた映像も見どころ。
ピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)。20年来の同性パートナーである2人がキャンピングカーで旅に出る。最初の目的地は、時が止まったような田園風景の先に湖が広がる、2人が出会った頃に訪れた思い出の場所だ。
次に向かったのはサムの姉夫婦が暮らす実家で、タスカーが企画したパーティーに懐かしい友人たちが集まる。ユーモアとウィット、何より愛に溢れた時間を慈しむ2人。しかし、ゆっくりと記憶を失っていくタスカーの病が、かけがえのない過去と、添い遂げるはずだった未来を消し去ろうとしていた。ついに旅の終着地、サムが演奏会を開く地へと向かうが……。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
愛し合うカップルに迫る逃れようのない別れの時を繊細に描く。記憶が失われる病気を背負った作家は覚悟の道を決めて相手に衝撃を与えた。長らく連れ添った相手との別れの苦しみには男も女も関係ないとしみじみ。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
親密さや深い苦悩を見事に抑制された演技で表現するファースとトゥッチが素晴らしい。旅の背景となる湖水地方の雄大な自然や主人公たちが思いを馳せる深遠な宇宙など、ミクロとマクロの視点が奥行きを生み出している。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
このふたりの距離感がとても良くて、見ていて微笑ましい。自分の美しい姿を相手に覚えていてほしい気持ちは痛いほど理解できます。ファースもトゥッチも自然で、その家族がまた良い。一つ一つの言葉が大切に生きた証し。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
冒頭から死を覚悟した旅であることが匂わせられており、そこに流れる曲も象徴的で一気に惹き込まれる。演じるファースとトゥッチは普段から仲が良いのもあり恋人役としての相性も良く、晩年を生きる哀愁が伝わる。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年7月9日号