「年を取ってもプライドというのは誰しもが持っている。皆、人前で自分の症状を話すことが恥ずかしいんだと思います」(頼子さん)

 山西医師は言う。

「ある統計によれば、尿漏れ経験者の中で実際に泌尿器科を受診したことがある方は約2割だったそうです。本人はそのつもりがなくても、娘さんにかかりなさいと言われてしぶしぶ足を運ぶケースもよく見られます」

 尿漏れの対処策はいくつかある。広く普及しているのは尿吸収専用のライナーや尿漏れパッドなど、専用の排泄ケア用品を使用することだ。近年では女性に限らず、男性向けの尿ケア製品も充実している。軽い「漏れ」が続くのであれば、まず試してみたいのが尿漏れパッド。普段の下着に装着することで、尿を吸収してくれる。ユニ・チャームでは14年に初めて男性向けの「ライフリー さわやかパッド男性用」を発売。前幅を広げ、薄さを5ミリにするなど、男性が使いやすいように工夫を凝らした。現在は「ライフリー」ブランドだけで7種類の商品をそろえる。

 一体、どんなときにパッドを使えばいいのか。同社企画本部広報室の渡邊仁志さんは、こう話す。

「『漏れ不安』があると人と会うのがおっくうになり、外出を控えることにもつながりかねません。トレーニングや治療など、特に漏れ不安が起こりやすいシチュエーションで試していただくのがいいと思います」

 ポイントは、始終着用する必要はないということだ。「排泄ケア用品は、『お守り』のようなもの。尿漏れが起こっても普段どおりの生活を送るための対処品として捉えていただきたい」と渡邊さん。普及が進む一方、注意もあると言う。

「おむつ=寝たきりの人が使うイメージがあり、当事者からすれば『恥ずかしい』という感情につながりやすい。おむつでなく『パンツ』、失禁でなく『吸水ケア』と、製品開発時は言葉選び一つにも細心の注意を払っています」

 ある程度漏れの期間が続く場合は、尿漏れパッドと下着が一体となったパンツタイプもある。大手繊維メーカーのグンゼが発売するのが、「愛情らくらく ニットトランクス(前あき)」。

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