室井佑月・作家
室井佑月・作家
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、コロナ禍での東京五輪開催を憂う。

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 6月20日付の「日テレNEWS24」によれば、「19日、東京オリンピックに出場するウガンダの選手団が成田空港に到着しましたが、うち1人が新型コロナウイルスの陽性と確認されました。残る8人は、事前合宿が行われる大阪府泉佐野市にバスで向かっています」とのこと。陽性者と一緒に長時間、飛行機に乗っていた残りの8人は、濃厚接触者の疑いがある。その場(成田)で隔離しなくていいのだろうか。

 菅首相は「国民の命と健康を守り、安全、安心な大会が実現できるように全力を尽くすことが私の責務だ」といいつづけている。「国民の命と健康を守ることが前提条件。前提が崩れれば、そうしたことは行わない」とも。

 菅首相の発言の前提とやらはもう崩れている。しかし、そんなことお構いなしだ。21日付の「KYODO」によれば、「東京五輪・パラリンピックに向けた大会組織委員会、東京都、政府、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の各代表による5者協議が21日、東京都内で開かれ、地方を含めた五輪会場の観客数上限を原則的に定員の50%以内で最大1万人とすることを正式決定した」という。

 でも、「IOCなどの大会関係者や低価格で観戦機会を提供する『学校連携観戦プログラム』で入場する児童、生徒らは別枠とする」らしい。

 これって、子どもたちは付け足しにされただけ。IOCの関係者やスポンサーの招待客は、何が何でも全員入れたいってことじゃない? オリンピックとは、あたしたちの金(血税)を集めて開かれる、“上級国民”のための祭りなんだね。

 新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長らの提言、「無観客が最も感染拡大リスクが少なく望ましい」といった言葉も無視された。

 IOCのバッハ会長が国際ホッケー連盟関係者に向けたメッセージで、「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない」と述べて問題になり、後からその犠牲は日本の人に対してじゃない、と言い訳していたけど、やはりあれはあたしたちのことだった。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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