だいぶ決めつけた書き方をしてしまいましたが、私はこのようなネット民たちの思考や精神構造が、どうしても好きになれません。自分が努力するよりも他人の失敗を待つことで、充足感や安心感を得ようとしているようにしか見えないからです。主張をしたり批判をしたり、好き嫌いを持つことはもちろん自由ですが、あまりにも不条理な否定をされ続けている人がたくさんいます。何かにつけ「忖度」とか「偏向」とか「利権」とか、さも知っている風の言葉を一斉に連打しているだけで、機知や独創性の欠片もない匿名の人たちが、テレビはもとより世の中全体をだいぶ左右しています。「ネット民」という目に見えない存在と共存しなくてはならない時代を生きている自覚が、果たして私たちにどれだけあるか。これが今後ネット民たちの「生きがい」に喰われないための鍵になっていくでしょう。

「仮想敵こそが最たる偶像=アイドルである」。だとすれば、「ネット民」の概念を作っているのは、悲しいかな私たち世間なのかもしれません。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2021年7月2日号