元々、このシステムの運用は2、3年後を想定し、準備が進んでいた。世の中がコロナ禍になったとき、ある僧侶から相談があったという。

「『法要が9割以上キャンセルになった。何とかならないか』と。これは需要が差し迫っているということで、急ピッチでシステムを構築しました」

 ただ、反発の声もあった。運用開始直後、「こんなので供養できると思っているのか」「葬儀をオンラインでやるなどいかがなものか」と言われたこともあったという。

「それでも最近はこうした声はまったく聞かれません。コロナ禍が長引いて、普通のことになった。葬儀社は依頼がなければ売り上げが立たなくなりますし、オンライン需要はますます高まっていく。コロナが収束しても、葬儀のニューノーマルになるのではと考えています」

 同様に「オンライン含めコンパクト葬の流れは加速していく」と話すのは、本県と大分県の県境にある金剛宝寺の住職・井上仁勝さん。

「かつては一族総出で冠婚葬祭をやっていましたが、今は家族単位で参列者自体が少ない。無理なく負担を軽くして行える葬儀が求められています」

 同寺では、ウィズコロナの時代の新しい葬送の形として「一日葬墓」というプランを提供している。もちろんオンラインにも対応している。

「本葬、初七日、四十九日、納骨までを一日で終わらせるプランです。今は通夜や告別式を経ずに直葬してくる人が多いのですが、葬儀だけはしてあげたいと。ただ、節目節目で何度も集まれない。そうしたニーズに応えられるのです」

 直葬後にお骨を持っていき、葬儀を改めて行い、納骨。所要時間は2時間前後だという。オンラインでの配信はお寺に完全に任せることができる。

「本堂がスタジオ化しているので、読経するお坊さんがアナウンスしながら、手元のスイッチャーで配信を開始します。参列者しか見られないようになっているので、不特定多数に見られる心配もありません」

 金剛宝寺にもまた「ご先祖様に対して失礼じゃないのか」といった声が寄せられたというが、「やれないより、オンラインでできるならやったほうがいい」と納得する人が多いようだ。

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