「俳優としての自分は、自信がないわけでもないけれど、あるわけでもないです(笑)。三谷さんがまた声をかけてくださったことが嬉しかったし、役としても、カンパニーとしてもおもしろそうだと思った。正直ミュージカルに対しては苦手意識があるんですが、この作品は、『僕の歌を聴いてください』という感じではない。もちろん、音程や歌唱力は大事だけど、そこが一番じゃないところにも惹かれました」

 昨年、三谷さんと初タッグを組んだときは、三谷さんに対して、「役者のことがすごく好きなんだな」と思った。

「稽古の休憩時間、いろんな人に話しかけて、積極的にコミュニケーションを取ってくださるんです。僕に対してお芝居の細かい部分はいろいろ指示しながら、全体像について多くは語らずに、放置しておく。そして突然、『どう?』と不意打ちで質問される。ちょっとSっけがあるのかなと(笑)。でも何より、三谷さんに褒められるとすごく嬉しい。笑っているとめちゃくちゃ嬉しい(笑)。喜劇の中の笑いって、緻密に計算されている部分と、その場で起こることが融合して生まれると思うんですが、『好きにやってください』とアドリブでふざけさせたり。プレッシャーもありましたけど、コメディーの難しさがやりがいにつながった。それはあのとき三谷さんに引き出してもらったのかな、と思います」

 さまざまな歴史上の人物が登場するミュージカル。瀬戸さん自身は、日本の歴史にはあまり詳しくはない。3年前にこのミュージカルを観たときは、「学生のときにこうやって楽しく歴史を学べたら、もっと興味を持てたかも」と思ったそう。

「『家族の歴史』という歌の中に『あなたが悩んでいることは いつか誰かが悩んだ悩み』という歌詞があります。三谷さんのホンは、そうやって、歴史上の偉大な人物も一人の人間なんだということを再認識させてくれる。以前、大河ドラマ『花燃ゆ』で演じた松下村塾の吉田稔麿は、若くして亡くなった武士ですが、今の人たちと同じように恋愛をしていました。歴史の授業では習えない人間らしいストーリーを垣間見られるのは、エンターテインメントのおもしろさだと思います」

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