林:曲も80年代のダンスっぽい感じですよね。

田原:そうですね。船山基紀さんという方のアレンジなんですけど、80年代は、作詞・阿久悠、作曲・筒美京平、編曲・船山基紀というのがいちばんゴージャスな組み合わせだったんです。僕の楽曲でも、いちばんたくさんアレンジをやってくれてる先生なんですよ。なつかしい昭和の香り満載のアレンジをしてくれて、華やかになりましたね。船山マジック恐るべし!

林:還暦を前にして「やっぱり自分は歌手だ」って再認識した感じですか。俳優もしてらしたけど、ずっと主役だったから、渋い脇役なんてイヤでしょう?

田原:そうなんですよ。「主役じゃないとやんない」とか言っちゃって、「いい加減にしろ、おまえは」って言われるけど、それでも主役じゃないとやりづらい。誰かのお父さん役とかのオファーもあることはあって、百パーやらないってわけじゃないけど、ステージがいちばん好きなんで、やっぱり俺は歌手だなって思ってますね。

林:なるほどね。

田原:僕の強みはダンスも含めて楽しんでもらえることなので。今回77作目のシングルですが、いままで出した曲の8割くらいは振り付けがついてますからね。キツいんっすよ。でも、やってます。

林:ジムで鍛えてるんですか。

田原:何もやってないです。腹筋とかもやったことないの。でも(筋肉が)落ちないの。身長175でジャスト60キロ。

林:すごい! 誰かにいつも見られてるという緊張感から?

田原:それもたぶんあると思う。考えてみりゃ、家でコーヒーいれるときも、けっこう姿勢よくしてるし、こうなること(ダラッとした格好をしてみせる)って百パーない。うちでもカッコつけてますね。夜なんか自分が窓ガラスに映るじゃない。そうすると、やらなくていいのにステップ踏んでみたりとかさ(笑)。見られるのが当たり前で、感覚がマヒってる。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

田原俊彦(たはら・としひこ)/1961年、神奈川県生まれ、山梨県育ち。79年、ドラマ「3年B組金八先生」(TBS系)でデビュー。共演した近藤真彦、野村義男とともに「たのきんトリオ」と呼ばれ、人気沸騰。80年の歌手デビュー作「哀愁でいと」は75万枚を売り上げ、同年「ハッとして! Good」で日本レコード大賞最優秀新人賞受賞。オリコンチャート1位獲得12回、ベスト10ランクイン38曲。以降、コンスタントにCD発売、コンサート開催と精力的に活動を続け、今月、77作目のシングルで、自身の60歳記念ソングの「HA-HA-HAPPY」をリリースした。

週刊朝日  2021年7月2日号より抜粋